Episode No.986(20011023):自分を支配できているか?

もう一人自分がいたら、どんなに楽だろう・・・
そんな風に思ったこと・・・誰にもあるんじゃないかな?

藤子不二雄の「パーマン」に自分のコピー・ロボットが出てきたよね。
自分がパーマンに変身している間、代わりに自分を演じてくれる・・・
あの鼻の頭の黒いヤツ。

自分がパーマンにでもなれる能力があれば別だけど・・・
結局、今のままの自分が2人いたところで、
2人ともナマけていたんじゃ・・・何も先に進まない。
むしろ、悩みが倍になるだけだ。

それこそ、かつての藤子不二雄のように・・・
同じタッチの漫画を描ける人間が2人いたら、確かに便利かも知れない。

仕事は倍はかどるし・・・気の合う者同士だから、アイデアもふくらむだろう。
ただし・・・メシ代は倍かかるけどね。

1996年に世界中から注目を集めたクローン羊のドリーは、その後どうなったんだろう?

いくら同じ遺伝子を持つ・・・と言ったところで
どちらかが先に生まれている以上、複製・・・と言うよりは親子だよな。

よく似た親子でさえ・・・いや、よく似ている親子だからこそ
ひと度、違う方向を目指し始めたら、どこまで行っても平行線。

いかに同じ素材でも・・・生まれた時代が違えば目指すモノは変わって当然だ。

本当に協力しあえる間柄というのは・・・
同じ時代に生き、お互いの価値観はある程度理解できるけど
自分とは違う表現方法を持っている人間じゃないかなぁ。

同じところで腹を立てあっていたんじゃ、すぐにケンカになる。
つまり・・・自分と同じじゃ意味がないんだ。

ゲーテは「ファウスト」の第二部に、こんなセリフを書いている。

「自分自身の内心を支配することのできぬものに限って
 とかく隣人の意志を支配したがるものだ」

もう一人自分がほしい・・・
それは自分の意のままに動いて、自分に楽をさせてくれる人がほしいだけ。
もし、それが可能になったら・・・
自分は世間にとって必要のない存在になっちゃうよな。


参考資料:「ゲーテ格言集」高橋健二=編訳 新潮文庫=刊