Episode No.985(20011022):ブランド普及の落とし穴

パソコンが普及してからと言うもの・・・
コピーと言えば、データの複製を意味するように聞こえるが
やっぱり日常的によく使うのは、紙から紙へのコピーだろう。

今から、ちょうど63年前の今日・・・
1938年10月22日は、コピー機の第一号が完成した日だ。

発明者は・・・
当時、ニューヨークの特許事務所で働いていたチェスター・カールソン。

特許事務所の仕事には書類の複写も多そうだから
おそらく必要に迫られての開発だったろう。

カールソンは早速、この企画を企業に売り込んだ。
が、どこに行っても相手にされず・・・
ようやく製造してくれる企業が見つかったのは、開発から9年後の話。

特許権を取得した企業の名はハロイド・カンパニー、
のちのゼロックスである。

そうえいえば昔はよく、コピーをとることを「ゼロックスする」なんて言ってた。

一企業のブランド名が、一般名称にまでなるのは
それほど普及した証拠で、実に名誉なコト、と思いきや
そうでもないらしい。

ある世界的なブランドを持つ有名企業と提携関係にある
国内のマーケティング担当者の話によれば・・・
企業では、むしろブランド名が一般名称になることを嫌うらしい。

つまり・・・
後発で出てくる似たような製品も自社ブランドで呼ばれてしまっては
ブランド・イメージやブランドの持つ優位性が失われてしまう、と言うのだ。

もし、後発に安かろう悪かろうというモノがあれば・・・
それさえ自社ブランドのせいにされかねない。

確かに、そういった現象はよくあるよね。
ヘッドホン・ステレオは、何でもウォークマンと呼んじゃう人もいるし・・・
ジェット・スキーやセロテープ、ホッチキスだって、本来はみんなブランド名だ。

知られないコトには売れないから、少しでも多くの人に知ってほしい。
だけど、つねに特別なモノとして認識させるのは難しい。

正確に知ってもらうためには、正確な情報を発信し続けなければならない。
そして、その情報はいつも他より一歩先を行くモノでなければ・・・
気がつけば、すぐにその他大勢のひとくくりにされてしまう。

企業もブランドも・・・そして個人もね。


参考資料:「歴史の意外なネタ366日」中江克己=著 PHP文庫=刊