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Episode No.126(990121):火事場の馬鹿力

"火事場の馬鹿力"とは、ご承知の通り"いざ、という時に発揮される力"のことだ。

はたしていったい何時が"いざという時"なのかは、人によって解釈が違い過ぎる。
ゲーテの言葉に「砂漠のインド人は魚を食わぬことを誓う」というのがあるが、場合によっては体のいい言い訳に過ぎない・・・ということも少なくない。

"いざという時"とは、言い換えれば"トラブルが起きたり、転機にさしかかった時"のことである。

例えば、ここにあまり仲の良くない夫婦がいたとする。
日常は箸の上げ下ろしがうるさいなどと、本当に些細なことでケンカをしている。
しかし、ここで言い争いができるのは2人が健康で日常が平和だからこそ。

ひと度、どちらか片方が病に伏せたり、あるいは子供が交通事故にでもあったりすると、もうそれどころではない。

病気や事故もイヤだが、もっとイヤなのが戦争。

1914年6月、オーストリア・ハンガリー帝国の占領下にあったボスニア州の首都サラエボで、オーストリア皇太子がセルビア青年に暗殺されたことに端を発した第一次世界大戦は、当時の日本にとって天の助けだったという見方もある。

当時の日本は内閣が次々に倒れ、政治的に非常に不安定だった。
その一方で国民運動がさかんになり、政治家たちは非常な危機感を持っていた。
そこにヨーロッパでの戦争だ。
もっともらしい理由をつけて参戦した日本は、アジア・アフリカの輸出市場を独占し、大戦前には10億以上あった債務を大戦後には27億以上の債権に変えた。つまり、当時の金額で37億円以上も儲けたうえ、国民の目を国内から海外へまんまと向けさせることに成功した。

"不適切な関係"の大統領が、ミサイル攻撃でトップニュースを塗り替えたり、食うや食わずの国の元首が、国民に準戦時体制令をしいてみたり・・・。

世紀末にきて、物騒な話題が多いが昨今だが"火事場の馬鹿力"を見せつけるために、わざと火事を起こすようなマネだけは、してほしくないものである。

自分の力を発揮しようという姿勢は大事。
人生たかだか数十年。火事になんかあわなくたって、出し惜しみしているヒマはない。
あなたは、まさか"火事場の馬鹿力"を見せるためにライターを片手にしてはいないでしょうね?!


参考資料:「ゲーテ格言集」高橋健二=編訳 新潮文庫=刊
     「日本の歴史がわかる本」小和田哲男=著 三笠書房=刊

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