普通、名前には意味がある。
しかし、意味がありそうで実は深い意味はないのが企業名だ。
親が子供に「こんな風に育ってほしい」と願いをこめてつける名前とは異なり、企業名の場合、商売上の都合から言って、まず覚えてもらいやすいことが第一条件である。
だから、時代に合わせて名称を変更する場合も多い。
一時期、C・I(コーポレート・アイデンティティ)と呼ばれるデザインから入る企業の活性化法がもてはやされて、ずい分といろんな企業が名前を変えたり、マークを変えてみたりしていたが、数多くの企業が一斉に同じ時代に合わせ過ぎてしまったため、かえって似た名称や似たマークが氾濫して、肝心のアイデンティティがわからなくなってしまった・・・いうこともある。
覚えてもらえたならコッチで行こう・・・と社名を変えてしまった有名な例は、何と言っても『マンダム』。
かつては『丹頂』という社名だったが、チャールズ・ブロンソンを起用したCF「うーん、マンダム」が流行ったおかげで、ブランド名をそのまま社名にしてしまった。
ウォシュレットで知られる『TOTO』は、正式名称を『東陶機器』という。『TOTO』は、あくまでも通称だ。
その『東陶機器』という正式名称自体も実は設立時の社名である『東洋陶器』の略称からつけられた名前。
ロックバンドの『TOTO』は来日した際、どこのトイレに入っても『TOTO』というロゴを目にして「これは覚えやすくていい」と思って自分のバンド名にしたという噂もある。
だったら『INAX』もアリかな? と思うが、ルーツをたどると『東陶機器』も『INAX』も日本の貿易業界の草分けともいうべき企業、森村組(現・森村商事)にある。森村組の創業者によって設立された日本陶器合名会社 (現・ノリタケカンパニーリミテド)の衛生陶器部門が分離独立したのが『東陶機器』であり、さらに伊奈製陶として独立したのが『INAX』だ。
現在でも、この2社をはじめとした企業体は、森村グループと呼ばれている。
『富士通』の社名は日本企業としてわかりやすい名前だが、『富士通』の前身である『富士電気製造』は、もともとは『古河電気工業』とドイツの『ジーメンス社』がバックアップしてスタートした企業。
富士山の富士は、いわば当て字で『古河電気工業』の"ふ"と『ジーメンス社』の"じ"を合わせて付けられたモノだ。
あなたは、自分がいる会社や学校の名称の由来について説明できますか?