20100822
でじたけ流 教育論第524回

秘密基地の夏-でじたけ digitake.com


伊豆に秘密基地と称する小屋を入手したのは5年ほど前。
景気がよかった時に無理して買ったから、
今は大変な思いをしてるけど、ね。

当時、一緒に仕事をしていた盟友がガンに倒れて
心のバランスを失いかけた時、小旅行に出た。

学生時代は休みになれば
自主製作映画ばかり作っていて出歩くことはなかったし、
仕事をするようになったからは
出張以外では地方に行くこともなかった。

横浜の自宅から2時間下れば、
そこに別世界があることを、まったく知らなかった。

当初は御殿場から河口湖、山中湖周辺によく行った。
…で、このあたりの土地は
いくらくらいするんだろうと調べてみると、
首都圏の感覚とはヒト桁違っていて驚いた

よくよく考えてみると…
首都圏の感覚の方が、むしろ異常なんだけど、ね。

これなら買えるかもしれない…と画策をはじめる。
亡くなった盟友とも、
いつかは会社で保養所を持とうなんて、
そんな夢をよく語り合っていたから、
あいつと夢みたことを強引にでも実現しようとしていた。

一度決まりかけていた山中湖のマンションは
管理する不動産屋が倒産してしまいフリダシに戻った。

そこで御殿場方面にはこだわらず、
房総半島の物件も見歩いたけれど…
最終的には車でも電車でも行きやすい伊豆に絞ることに。

当初カミさんは
「どうせなら、あっちこっちに旅行する方がいい」
…なんて言っていたが、
「会社の決定」とつっぱねて購入。
結局はカミさんも「温泉があるから」と納得。

元来、私は借り物が嫌いなタチで、
ホテルや旅館に宿泊すると
チェックアウトの時間が気になって、
どうにも落ち着かない。

自前なら気兼ねは入らない。
ただし…管理は大変だけど、
自分で選んだ大変さなら覚悟もできるじゃないか。

土地は安いが
建物を建てるとなると金がかかる。

そこで、秘密基地には正式な建物はなく、
キャンピングトレーラーが数台鎮座している。

オートキャンプ場で使ってたやつとか、
地方から安く仕入れてきたやつとか…。

キャンピングカーというのも
子供の頃からの憧れだったし、ね。

写真のトレーラーは、ひと目見て
でじたけロボに似てる、と思い購入したもの。

エンジンはついてないから案外安い。

盟友との約束…のほかに、
田舎物件がほしかった理由が、もうひとつある。
それは…うちの子たちには田舎がない、からだ。

私の実家は自宅の隣だし、
県立高校の後輩であるカミさんは
同じ学区内、車で10分の距離に実家がある。

私が子供の頃には、
夏休みになると父親の実家がある静岡に行って、
山登りをしたり、ホタルを見たりした思い出がある。

カミさんの両親は四国出身なので、
四国の海の記憶は鮮明に残っているようだ。

伊豆に行くようになるまでは、
家族でよくディズニーランドへ行った

しかし、人工的なアトラクションは
多少のアレンジはあるものの、
いつ行っても同じで…やがて飽きてしまう。

ところが自然というやつは、
季節や時間帯によって
違う景色を見せてくれるので決して飽きない。

そのことは子供たちも十分感じているようで、
伊豆とディズニーランドだったら、
絶対に伊豆の方がいい…と言う。

ディズニーランドの方がいいと言うのは、
毎度草刈りに苦労するカミさんくらいだな。

そして、ここ数年は、
この秘密基地を足がかりに伊豆で遊ぶ機会が増えた。

伊豆の小屋の向かいには、陶芸家の一家が住んでいる。

そこには中学生と小学生の男の子がいて、
今やうちの子供たちとは
親戚のような付き合いをしてる。

この間行った時にも、
夜遅くカブト虫を捕りに山には入って、
なかなか帰って来ないで一緒に叱られたり、ね。
おかげてオオクワガタが捕れたけど。

またこれも不思議な縁で…
向かいのダンナさんのお父さんは、
その昔、横浜の高校で美術の先生だったらしい。

なんと…
私が生徒会長をしていた頃の
…うちの高校の先生だった。

授業で直接教わったことはなかったが、
…あれは文化祭の時。

それまで文化祭のポスターは、
その美術の先生が書いたデッサンだった。

しかし、生徒主催の文化祭で
生徒がポスターを描かないのはおかしい
…と生徒会長である私が主張。

先生のデッサンをボツにして、
生徒からの公募を募ることにした。

だが…まったく集まらない。
そこで漫画研究部の部長でもあった私は
自分でポスター用のイラストを描いた。

そのまま印刷されるかと思ったけれど、
そこに待ったをかけたのが美術の先生。

私が一晩で描き上げたイラストは
友だちの似顔絵を集めた群衆だったけれど、
その中に
制服姿で煙草を持った奴がいるということが
問題視されたんだ。

…本当のことなんだけど、ね。
やっぱり学校側としてはマズイと。

美術室に呼ばれて、
あーだこーだ言われた挙げ句、
結局ポスターは
描いたうちの半分だけを拡大して印刷された。
もちろん煙草を吸ってる奴はカットされて。

その時、文句をつけた先生の孫と、
うちの子供たちが仲良く遊んでるなんてなぁ…。

先生は今、藤沢に住んでいるらしいけど、
たまたま息子のところに来ていた時に、伊豆で再会した。

元生徒会長ということで、
私は先生の記憶に残っていたようだけど、
あのポスターのことは覚えていないだろう(笑)。

向かいの一家が、この地に来た時、
ここはまったく森の中だったらしいけれど…
うちの周囲が造成されて、イッキに開けてきた。

国道と県道を結ぶ道沿いにあって、
数年前から道幅を広げる工事も開始されている。

実はここのローンはあと5年残ってる。
ローンを払い終わる頃には、
すっかり住宅地になってしまうんだろうな。

ここ5年で一番変わったのは…やっぱり子供たち。
入場料を払うようなどころに行くと、
最初は大人2人の子供3人で入れたのに、
今では大人4人の子供1人分を
支払わなければならなくなってしまった。

そして子供たちがみんな小学生だった時と違って、
部活だの、塾だので、
家族そろって伊豆に行く頻度はめっきり減ってきた。

まぁ、ローンを組んででも、
子供たちが子供でいる時代に、
こういう場所で過ごせるというのは
無理した甲斐があったとは思ってるけど、
いつまで維持していられるのかは…頑張り次第。

道が開ければ土地の価値は上がるはず。
そうしたら、ここを売って、それを元手に、
もっと山奥に新しい秘密基地を作ろう。
それまで何とか維持しなければ。

子供たちは、きっと
慣れ親しんだこの場所の方がいいと言うだろう。

だけど、そん時には、
子供たちも、もっと大人に近づいているだろうから、
こう言ってやるんだ。

欲しかったら自分で自分の田舎を作れ!


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