Episode No.854(20010522):空間のつかい方

広告関係の仕事をしている関係で・・・
グラフィック・デザイナーとは年がら年中、話をしている。

コピーを書くのも私の仕事のひとつだが・・・
クライアントとデザイナーの間に入って、いろんな調整をはかるのも大きな仕事だ。

どうせ、お金を出して広告を出したり、印刷物を作るなら
スペースいっぱいに言いたいコトを何でも入れたい・・・というのがクライアントの人情。

ところが、書いたから読んでくれるというモノではないし・・・
かえってゴチャゴチャして読みづらくなると読んでもらえない可能性も高い。

そこを「やんわり」と説き伏せて、納得してもらうのが、私の仕事となる。
言われた通りにやって、評判が悪ければ・・・結局、私のせいになっちゃうし。

要素があんまり多すぎると、よくデザイナーに
「デザインするところがないね」と言われる。

つまり、何とか要素を押し込める・・・のであれば
誰がやっても結果は同じようになってしまう、というワケだ。

デザインとは、ひとコトで言えば・・・空間をいかに使うかというコトだ。

どこに空間を持ってきて、何を目立たせるように配置するか、
そこがデザイナーのセンスの見せどころ。

空間に余裕のない場所では、それを表現するのは確かに難しい。

うちのクライアントは、まだそういうコトに理解を示してくれるからいいようなものの・・・
中には空間がたくさんあると、その分「安くしろ」と言ってきたところもあった。

何でもかんでもシャレたデザインならいいか・・・
というと決してそうではなく、対象や紹介する製品特性によってもいろいろなんだけれど

すき間がないというのは何とも窮屈であるコトに変わりはない。

物事がどんどんデジタル化されていって・・・
すき間がなくなればなくなるほど・・・人々は逆にすき間を求める。

その、すき間の作り方や、つかい方が・・・企業や人のセンスなんだろうね。
センスを発揮できる場所がないと・・・人間はコンピュータに負けちゃうかも。

無駄もそういう風につかえれば無駄じゃない。
そういう風につかえなれれば・・・やっぱり無駄だけど。
それを無駄にしてしまう人間しかいなければ・・・その人間ごと無駄ってコトになっちゃうな。


参考資料:病み上がりのデザイナーほか