Episode No.841(20010507):勝つ力

ベートーヴェンの『第九』と言えば、暮れの定番だが・・・
そもそも、この曲の何が凄かったかと言えば
交響曲に合唱を入れた、という点が常識破りだったらしい。

青年の頃から、この『喜びのうた』の構想を抱いていたベートーヴェン
27歳頃から耳が不自由になり・・・かすかな震動しか感じられなくなってしまった。

それでも作曲を続け・・・
『第九』を完成させたのは、今から178年前・・・1823年の2月。
翌1824年の今日・・・5月7日に初演の機会を得た。

微妙な空気を読みながら指揮棒を振ったベートーヴェン・・・この時、54歳。

前代未聞の大合唱と力強い交響曲に圧倒された観衆は
演奏が終わるやいなや立ち上がって、割れんばかりの惜しみない拍手をステージに浴びせた。

しかし、肝心の指揮者は一向に振り向かない。
・・・歓声がまったく聞こえなかったのだ。

近くにいたアルト歌手が振り向くように手振りで知らせる。
ようやく振り返ったベートーヴェンは・・・熱狂する観衆を前に何を思っただろう。

そういえば、エジソンの耳が不自由だったのも有名な話。

音を感じるためにピアノを噛んだ。
その歯形が残ったピアノが今も保管されてるらしい。

あのヘレン・ケラーをはじめ・・・
耳が不自由な人たちを助けるために尽力をつくしたベルは研究の末、電話を発明した。

しかし、自分の耳が不自由だったエジソンは
ベルの作った電話では、まだ聞こえにくいと改良を重ねる。

現在の電話の元になっているのは、エジソンが作った改良型の方。

「ハロー」という言葉自体、エジソンが考案したものだという証拠の書類が
何年か前にアメリカの電話会社AT&Tの100年以上前の書類から見つかっている。

人並みの努力もしていないのに・・・
五体満足でいるだけで、自分を「人並み」だと思っている人は少なくない。

自分に何ができないのか・・・
それを認め、知っている人は・・・そうでない人より、ずっと強い。

そして世の中は・・・強い意志を持った人が最終的には勝つようにできている。


参考資料:「歴史の意外なネタ366日」中江克己=著 PHP文庫=刊 ほか