Episode No.714(20001209):愛すべき故郷は
またまた命日の話で恐縮なんだけど・・・
今日、12月9日は千円札の顔、夏目漱石の命日だ。
漱石の話も、ついこの間したばかりだけど・・・元は学校の先生だったというのは有名な話。
亡くなったのは今から84年前の1916年・・・大正5年12月9日。
享年50歳・・・死因は胃潰瘍だった。
漱石は東京・牛込の生まれで"江戸っ子"文士のイメージが強いが・・・
実は本籍地は、北海道にあった。
当時、北海道と琉球・・・今の沖縄には徴兵制度がなかったため
徴兵逃れのため、26歳の時に分家し、本籍地を北海道に移していたのだ。
そのおかげで私たちは、数々の名作を読むコトができるようになったワケだから・・・
"徴兵逃れ"の漱石も国に大いに貢献しているのは誰もが認めるコトだろう。
さて、漱石にとって50歳でこの世を去るのは、まったく予定外の出来事であった。
新聞に連載中の『明暗』は永久に未完の大作となってしまった。
実は漱石には『明暗』完成の後、少なくとも3つの計画があったらしい。
まず第1に、演劇の脚本を執筆すること。
これは『明暗』完成後に新聞連載されるコトが決まっていた。
脚本の新聞連載なんて・・・ちょっと変わっているような気もする。
もし、漱石がその仕事を完成されていたら・・・
日本の脚本業界も今とは少し別の方向に進んでいたかも知れない。
実際に上演されたり、映像化されないかも知れない脚本が、もっと一般的に読まれるようになってたりしてね。
第2の計画は、学生時代の友人・・・故・米山保三郎の伝記を執筆するコトだった。
これは学生時代の友人たちと長年にわたる約束だったらしい。
そして3番目の計画は・・・教師に戻り、再び教壇に立つコトだった。
と、いうワケで・・・
もし、漱石の寿命がもう少し長かったとしても・・・
それまでの小説家・夏目漱石でいたかどうかは、わからないし、そうはならなかった可能性が強い。
漱石いわく・・・「人は"自分の故郷"を裏切ってはいけない」
自分の意志では選ぶことはできなくても、誰にでもあるのか故郷。
漱石は、それを「余の意志以上の意志」として愛し、それに忠実に生きた日本人だった。
あなたには、どんな故郷がある?