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Episode No.638(20000912):道具が助けてくれないモノ

情報端末が発達したおかげでコミュニケーションは、ものすごくとりやすくなった。
こうして見知らぬ方たちとも語り合えるようになったし・・・。

でも・・・昨日の公衆電話の話じゃないけど
道具が、どんどん便利になっても、人間のやるコト自体はあんまり変わってないように思う。

むしろ、便利になった分、言い訳がなくなるから・・・
メールの返事ひとつ打てないと、その時点で信頼をなくしてしまうコトさえある。

便利な道具を手すると・・・
つい自分の力が増したかのように勘違いしてしまう傾向には、充分注意しなければならない。

徳川夢声といえば・・・
活弁士として世に出て、トーキーが主流となってからは漫談家に転身。
俳優としても数多くのラジオ、映画に出演したことで知られる人。

その夢声の元に、毎日のように通いつめていた若者がいた。
もちろん夢声のファンで、自分も同じような世界に進みたいと考えていた。

通いつめるようになったきっかけは定かではないが・・・
とにかく最初に行った時に、ずい分もてなしてくれたので、ついつい通うようになったらしい。

有名な徳川夢声が、自分が行く度にウナギをご馳走してくれる。
地位も金のない若者にとって、実に感激の日々・・・。

しかし、後に夢声が亡くなって、日記が公表されると意外な事実が書いてあった。

「毎日、毎日、実に迷惑千万な若者。きわめて不快なり」

名指しで書かれていたので、相手はその若者に間違いない。
若者の名前を・・・永 六輔という。

毎日、ウナギじゃあ・・・さすがに、ね。
そこまではいかなくても・・・見た目より、神経質で気むずかしい人は少なくない。

三島由紀夫もそのひとり。
そんな三島と何十年にもわたるの交友を続けた美輪明宏はこんな話をしている。

「いい顔をしていると、すぐに人は寄ってくる。
 でも、そういう人の中には平気でヒザの上にまで乗ってきて・・・
 しまいには頭をなでてくれと言わんばかりの人がいる。
 三島先生と私は、その点、お互いにわきまえていたのね」

決して臆病になることはないし、気を遣い過ぎるのも、かえって相手に気を遣わせてしまうけれど・・・。

コミュニケーョンの道具が簡便になったからといって・・・
礼儀が必要なくなったわけでは・・・ないよ、ね。


参考資料:「有名人 ウソのような本当の話」ユーモア人間倶楽部=編 青春出版社=刊 ほか