Episode No.587(20000714):あるものは「ある」! 今日は久しぶりに偉人の話。 1879年7月14日に海港コレラ病伝染予防規則が公布されたコトにちなんで・・・。 今日が1961年から設けられた「検疫記念日」だから、というワケでもないんだけど。 17世紀イギリスの医師、ウィリアム・ハーヴィ。 1602年頃、学位を得た彼は、ロンドンで開業医となり・・・。 やがて聖バーソロミュー病院の医師となり、1623年にジェームス一世の、1625年にはチャールズ一世の侍医に就任。 その後、ロンドン王立医科大学で解剖学の講座をもち、医師会の収入役にも抜擢された。 その間も開業医は続けていたというから、超多忙な生活。 しかも、自費である研究活動も続けていたというから驚きだ。 ハーヴィは、アリストテレスの遵奉者。 彼が研究対象に選んだのは、アリストテレスが生命の中枢と考え最も重視した「心臓」だ。 思えば、心臓をハートと考えるのはアリストテレスの影響なのかも知れない。 今でこそ「心臓」が全身に血液を送る強靱なポンプであるコトは誰もが知っているが・・・。 当時は、いったい何のために「心臓」があるのか、ハッキリとしたコトはわかっていなかった。 アリストテレスの 「天空界の存在は、最も完全な運動である円環運動を続けている」 と、いう言葉をヒントに・・・ハーヴィが50歳の時に発表したのが『血液循環論』。 ガリレオの『天動説』、ダーウィンの『進化論』と同様・・・。 ハーヴィの『血液循環論』も発表直後は、古い権威のある学者たちから猛反発を食らった。 すこぶる短気でかんしゃくもちとまで言われたハーヴィ。 その彼が、辛抱強く研究を重ねていたというだけで、世間は驚いたが・・・。 長年の研究の成果を自分なりに得たハーヴィは、自説に反論する人たちに対して静かに言った。 「悪言をもって悪言に酬することは、真理を探究する者にとっては価値なきもの」 人間が行う、すべての発明発見は「なぜ、そうなのか」という素朴な疑問からスタートする。 目の前に存在する真実を、自分にとって都合のいいモノしか見ないようになってしまったら・・・。 どんなに権威や地位をもっている人でも・・・長くはない。 「それは、ある方がおかしい」なんて言うよりも・・・。 まず、そこにあるモノの意味を考えた方が賢いよ、ね。
参考資料:「医の名言」荒井保男=著 中央公論社=刊
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