Episode No.323(990908):カトリーヌの足場 現在、世界で一番長いトンネルと言われているのは、ドーバー海峡を横断する海底トンネルだ。 この海峡をはさんだイギリス-フランス間の距離は約34kmというから、東京-横浜間くらいか。 時々、この海峡を泳いで渡る人たちがいるけど、実際に泳いで渡ろうとすると流されてしまうために、最低でも50kmくらいは泳ぎ続けないと対岸にたどり着くことはできないらしい。 それを1往復半、距離にして150kmをイッキに泳ぎきった女性もいるというのだから、これは驚き。 時間にして約36時間かかったらしい。 今日のタイトルにある"カトリーヌ"というのは、実はこの女性のコト・・・ではない。 ドーバー海峡を横断する海底トンネルを作るために、フランス側から掘り進んで来た掘削機の通称が"カトリーヌ"と呼ばれていた。 同じくイギリス側からも掘削機が"カトリーヌ"とのランデブーを目指して海底を掘り進めた。 こうして1994年に完成した海底トンネルには「ユーロスター」という鉄道が通され、現在はロンドン-パリ間を約3時間で結んでいる。 ちなみに「ユーロスター」は、トム・クルーズ主演の映画「ミッション・インポシブル」にも登場しているらしい。例によって観てないけど・・・。 さて、問題はイギリス、フランスの両方からトンネルを掘り進めてきた掘削機たちが、どうなったか・・・である。 同じサイズのトンネルを掘りながら進んできたワケだから、すれ違うワケにはいかない。 もちろん、すれ違って進む意味もないのだけれど、単純にお互いが掘り進めていたら真ん中で掘削機同士が衝突してしまうコトになる。 通常のトンネル工事では、掘削機は計画の場所まで掘り進めると、その場で解体されて今掘ってきたトンネルを戻って運び出される。 ところが、全長34km、半分の距離としても17kmあるドーバー海峡の海底トンネルの場合には、大型掘削機を解体して運び出すという作業も並大抵の手間ではない。 手間がかかる・・・というコトは、それだけ経費もかかる・・・。 と、とうワケで実はイギリス側からトンネルを掘り進めて来た掘削機は、カトリーヌとのランデブーを目前にして解体され、その場に埋められるコトになった。 運び出すより捨てた方が安かった・・・のだ。 こうして、カトリーヌはイギリスの掘削機が埋められた上を通ってトンネルを貫通させた。 今でも「ユーロスター」の下には、イギリスの"名もない掘削機"が埋められている。
参考資料:「新・モノの作り方がズバリ! わかる本」素朴な疑問探求会=編 KAWADE夢文庫=刊 ほか
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