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Episode No.079:素朴な疑問が未来を開く

アメリカ陸軍の兵士、ジェイコブは足首をくじいてアラスカ基地に引きこもっていた。

軍から支給されていたジレットのカミソリと替え刃、シェーヴィング・クリームは、本国を出発した直後までは非常に快適なものだったが、このアラスカ基地では大変厄介なものとなった。

毎朝、ブ厚い氷を割って来ては溶けるのを待つ。髭をそるために、こんな重労働をしなければないらいのは、カミソリが水なしでは使えないためだ・・・と彼は思った。

戦争が終わると、ジェイコブは電気モーターで動かす"ドライ・カミソリ"の製作に乗り出した。

開発当初の"ドライ・カミソリ"のモーターはパンケースほどもあり、とても実用的とは言えなかったが、5年もの間、小型モーターの開発に没頭したおかげで、1923年についに特許を取得。

ここに、いわゆる"電気カミソリ"が誕生した。
自宅を抵当に入れてまで、この開発をあきらめなかった男の名は、ジェイゴブ。ジェイコブ・シックだ。

普段、当たり前のように使っているものに対して、素直に疑問を感じることから、新しい発明が生まれることは珍しくない。

私がかつて仕事を通じてお会いした、ある食品メーカーの社長さんもそうだった。

その社長さんは、誰もが焼きたてを食べることが当たり前だと思っていたモノをあえて冷凍食品にして販売し、大成功をおさめている。

開発中には「そんなモン、何でわざわざ冷凍にするんだ? 売れるはずない」と、ずい分言われたらしい。
しかし「何でわざわざ電気を使って剃る必要があるんだ」と言われたジェイコブ・シックと同様、自分の感覚を信じて開発に没頭し、みごと成功。

結果、焼く場所がない野球場や居酒屋などで大ヒットし、現在は家庭用冷凍食品としても販売されている。

あなたが、この間食べた"たこ焼き"、ひょっとすると冷凍だったかもしれませんよ。


参考資料:「はじまりコレクションII」チャールズ・パナティ=著 バベル・インターナショナル=訳
     フォー・ユー=刊

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