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Episode No.408(991216):小説 田中学校

『大宰相』全10巻を読み終えた。
モノがモノだけに劇画としては文字が多かったが、実に読み応えのある内容だった。

戦後30年余りの政治の歴史を綴った劇画巨編の原作は『小説吉田学校』。
しかし『大宰相』の後半は原作者、戸川猪佐武の急死(59歳だった)の後、闇将軍、
田中角栄が脳梗塞で倒れ、政治の舞台から去るところまで描いている。

その時の内閣総理大臣は、中曽根康弘。
直角内閣と言われた中曽根政権は、キングメーカーがいなくなったことで延命することになった。

つまり、
吉田茂から脈々と続く最後の大宰相は田中角栄だった・・・というコトになる。

田中内閣の後は、福田、大平、鈴木、中曽根・・・と続いたワケだが。
角福戦争とまで言われた宿敵・福田赳夫を除けば、いずれもキングメーカーの数の力によって作られた政権だった。

もちろん、その後も現在に至るまで幾人もの首相は登場しては去っているけれど・・・はたして" 大"宰相と言えるような人がいたのかどうか・・・。

裁判で有罪判決まで受けた元首相が、政権党である自民党を離党した後も党内では田中軍団が増殖を続けた。
すべてが金の力だったとは思えない。
その点については、
つい先日も書いたけど・・・。

だって、あなたがもし金をやるからいうコトを聞けと言われても、本当にイヤな相手だったら・・・断るでしょう?!

戸川猪佐武同様に私も田中角栄が好きだから、ついこんな書き方をしてしまうんだけれど・・・。
やみくもに権力に目くじらを立てて、ただ批判をしているだけでは何も変わらないと思う。

いかなる権力者も生まれながらに権力者というわれじゃない・・・ラストエンペラーじゃあるまいし、とくに田中角栄の場合はね。

『大宰相』の各巻のはじめには、田中角栄の元秘書、
早坂茂三が少し長め、けれど非常にリズミカルな文体の解説を書いている。
実はこの人も学生時代には共産党活動をしていて・・・それが元で大手の新聞社に落ちて、東京新聞の記者になったというが・・・。

最終巻の解説の文末には、こんな一文があった。
「本書の土台になった『小説吉田学校』の原作者は、中曽根政権の幕開けを見た時点で急逝した。私のつたない解説も故人に敬意を表して、足並みを揃えたい。機会があれば、『小説田中学校』を上梓して、バルザック流の人間喜劇の続編を描きたいと念じている」

う〜ん、早く読んでみたい。


参考資料:「大宰相」戸川猪佐武/さいとうたかを=原作 早坂茂三=解説 講談社+α文庫=巻

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