Episode No.385(991119):権力の魔力 「人民の、人民による、人民のための政治」 第16代アメリカ大統領、エブラハム・リンカーンの名演説が行われてから、今日でちょうど136年が経つ。 最近は、幼い少女に勧められてはやしたという逸話のあるそのヒゲを真似た、リンカーンのそっくりさん強盗が出没して、警察の人相書きに登場するという不名誉な事件もあったが、リンカーンの顔だけでなく、この名演説を知らなぬ人はいまい。 この演説は、1863年の今日11月19日に南北戦争の天下分け目の戦いとなったゲディスバークにおいて、この戦いで死んだ兵士たちの霊をなぐさめるために1万8,000人の観衆の前で行われた。 リンカーンの揚げ足をとるつもりは決してないんだけれど・・・人民っていったい何だろう? 人民のために人民の先頭に立ち、それをまとめていく者は政治家である。 いうまでもなくリンカーンも政治家だ。 デジタル社会になって、ますます知的所有権の問題は注目を浴びるようになっているが、少なくとも日本において、確か政治家に肖像権はないはずだ。 公人である政治家は、やはり一般人ではないのだ。 人民と一般人とでは、多少意味合いが異なるかもしれないが、少なくとも誰かの上に立った時、良くも悪くも人は変わる。 また、変わることができなければ決して人の上に立つコトはできないだろう。 さいとうたかを&戸川猪佐武の『大宰相』は全10巻。 今月が最後の配本で8巻と9巻が出るのを楽しみにしている。 ここに登場する戦後の総理大臣も例外なく誰もが総理総裁の椅子にしがみついて人が変わった。 愛弟子、池田勇人と佐藤栄作の首班争いを見かねて、池田首相に対し、佐藤と争わずに席を譲るべきと意見した吉田茂も、自分が総理にしがみついていた時代には逆に池田勇人から総理を降りるべきだと進言されていた。 幕府を倒して新政府を作った若者たちも、やがては新政府の要職にドッカリとアグラをかき、ご自慢の金時計を見せ合うことが楽しみになった。 それに反発した西郷隆盛は九州に帰るが、ついには西南戦争に果てることとなる。 純真な子供心に描いたモノを大人の技術をもって実現できるコトが理想。 しかし、現実問題・・・人は良く変わるコトは少ないが容易に悪くは変わってしまう。 とはいえ、それを拒否ばかりしていても何の解決にもならない。 それにうち勝っていくためには、もっともっと強い心とそれを曲げずに伸ばしていけるだけの技術が必要だ。 違う! と思ったモノとは戦わないと・・・勝ったコトにはならないよ。
参考資料:「今日は何の日」PHP研究所=刊 「大宰相」戸川猪佐武=原作 さいとうたかを=劇画 講談社+α文庫=刊 ほか
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