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Episode No.033

ここに110冊の本がある。
積み重ねると軽く1mは越える。・・・が、とても安定をとれそうはないので計算してみると1m43cmくらいになる。

本のタイトルは「こちら葛飾区亀有公園前派出所」。作者は秋本 治。デビューの頃は当時「がきデカ」が大人気だった"山上たつひこ"にあやかって"山止たつひこ"と名のっていた。主人公の名は両津勘吉。
週刊少年ジャンプに長期連載されている"こち亀"の"両さん"、その記念すべき110巻目のコミックスが発売された(10月7日発行となっているが、私は3日に書店で手に入れた)。

記念すべきと言うのなら100巻ちょうどの方が区切りはいいのだが、両さんは"一応"警察官なので、やっぱり110という数字は記念すべき数。と、いうわけで110巻にはオマケのシールまで付いている。

およそ警官らしくない破天荒な主人公がウケて、連載が開始されたのは今から22年前、1976年のこと。
いつしか両さんは下町の人情お巡りさんとなり、寅さんに次ぐ、葛飾出身の人気者となった。

ところでジャンプコミックスの文末には必ず著名人の"推薦文"のようなものが掲載されている。
第1巻に登場しているのは、小林よしのり。当時「東大一直線」で人気を博していた秋本治と同時期にデビューした漫画家である。

以来、グループでの登場も含め、漫画家(赤塚不二夫や故・藤子・F・不二雄etc)からアイドル(故・堀江しのぶや最近ではPUFFYの大貫亜美etc)や、タレント(ツービート時代のビートたけしetc)、作家(村上龍etc)など110組の人々が、この欄に原稿を寄せていることになるわけだが、かつて一度だけ、作者自身が"推薦文"への返事を書いている。
63巻の映画監督・山田洋次の「寅さんと両さんを共演させてみよう」という提案に対するもので、直筆に書き下ろしのイラスト付きで載せられた1ページに、作者の謙虚さがうかがえた。

これだけ長い間、人気を博す連載をし、アニメ化までされているというのに、作者・秋本 治は滅多にマスコミには登場していない。かつてテレビ、ラジオに1〜2度出演した程度だ。

「よく長い間、質を落とさず描き続けているものですね」
という漫画家・大友克彦(95巻に登場)の問いに、
「楽しみながら描いてるし、まだネタはいくらでもある」と答える秋本 治は、まさに生粋の漫画家。

もともと、さいとうたかをの劇画に憧れて、この道に入ったというが、今ではそのさいとうたかをと、まるで大リーグのホームラン記録争いのような激しいデッドヒートを繰り広げている。

前代未聞のコミックス100巻到達は、発行時期の関係から「ゴルゴ13」に一歩ゆずった「こち亀」だが、現在、ゴルゴは109巻で、また一歩リードした。


参考文献:「こちら葛飾区亀有公園前派出所 1〜110巻」秋本 治=著 集英社=刊

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