先日見た、スピルバーグ監督へのインタビューでは、
こんなやりとりも印象に残った。
─JAWSの時には大仕掛けな機械を使って
撮影をされたと聞いていますが、
もし、あの当時に現代のようなCG技術があったら、
あの映画はどうなっていたと思いますか?
─おそらく、あのような大きな成功を収めることは
できなかったでしょう。
機械仕掛けの巨大なサメは、私たちの言うことを
なかなか聞いてくれなかった(笑)。
そのために私は
大幅に演出プランを考え直す必要があり、
いかにサメを出さずに恐怖を作り出すか必死でした。
その結果、あの、
泳ぐ人たちの足元の映像ができたんです。
あれを見て、観客の皆さんは、個々に
恐ろしいサメの姿を想像してくれたでしょう。
つまり、あの映画は
観客の皆さんの想像力によって成り立っているのです。
…細かな言い回しは違うかもしれないけれど、
だいたいこんなニュアンスの話をしてた。
撮影現場の土壇場で飛び出したアイデアが
映画史に残る名シーンを生んだのは、
黒澤明監督の「七人の侍」と同じ。
そして…
恐怖や心地よさの記憶を突かれることによって、
心を揺さぶられるのは絵画と同じだね。
そういえばJAWS公開当時、
怖くて風呂にさえ浸かれなくなった人がいる
…というニュースを聞いた記憶がある。
もともと想像力で怖がらせていたから、
想像力が働きすぎてしまった結果だろう。
喜怒哀楽…ことに恐怖は、
やっぱり現実より想像していることの方が恐ろしい。