Episode No.3747(20100827)
実録トラブル体験談
巨大組織との仁義なき戦い-digitake.com 公に知られた大きな組織は極めて常識的で紳士的、付き合っていて安心感がある…なんて思い込んでいたら大間違い!

組織が大きくなればなるほど個人の責任感は希薄となり、そこには社会の常識を逸脱した独善的な常識が存在する。しかし、それを作り出しているのも、そこにいる個々の人間たちなのだ。


05 裁判長は誰の味方?

私が体験した訴訟事件は東京地方裁判所に持ち込まれる数々の案件としては極めて小さなものだったろう。

裁判所といったら、よくテレビに出てくる、あの法廷に行くのかと思ったら、そんな場所には一度も入れてもらうことはなかった。
コの字型に机が並べられた会議室の真ん中に裁判長が一人座って、原告と被告は相対するものの、直接言葉を交わすことはなく、代わる代わる廊下に出されて、それぞれの言い分を聞いた裁判長が、それぞれを「説得」する。面倒な正式な裁判に発展しないよう「説得」するのだ。

そう…実際の裁判で一番感じたのは、裁判所は決して被害者の味方ではない、ということ。

裁判長によっても対応は違うようだが、顧問弁護士が独自のネットワークによって調べてくれた内容によると、どうやらこの担当裁判長は近く異動が決まっていて、異動する時に中途半端な案件を残しておくと、それが評価に響いて出世の妨げになりかねないらしい。

こうした情報まで取りながら、裁判長の意向を探りつつ裁判を有利に進めていかなければならないのだから、弁護士といえども法律さえ勉強していれば務まるものではない。その苦労は営業マンと何ら変わりがないと思った。

こちらとしても早く決着をつけてくれるに越したことはないが、納得のいかない結論を強引に出してもらっては困る。

何せ、その裁判長には「こんなことで時間と金を遣わないで、さっさと新しい仕事をしたらどうか」なんて、不正を訴えたこと自体が否定されるようなようにことを言われたからね。
むろん「そんな泣き寝入りみたいなことをしたら、昼夜を問わず頑張ってくれた社内外のスタッフに合わせる顔がない。スタッフの信用を失ったら、それこそこの先商売ができなくなる」と即座に言い返したけどさ。

逆に裁判長にこんな質問をしてみた。
「商売上のあきらかなルール違反をしている企業を裁判所は裁かないのか?」
すると、裁判長はこう言った。
「その企業がいいか悪いかを決めるのは裁判所の仕事ではない。それを決めるのは社会だ」
…じゃあ具体的な訴えに対する裁判所の仕事って何なんだ?

ようするに裁判長も大きな組織の人間で、自分の出世の得にならないことは、さっさと片付けたいわけだ。少なくとも残念ながらこの時の担当裁判長は。

そんな印象が決定的になったのは示談書作成の時だった。

結局は裁判長に「示談なら金はとれるが、実際の裁判に持ち込んだら金はとれないかもしれないし、もっと金がかかる」と半ば脅されて示談書の作成となった。
この提訴にあたって私に委任状を預けてくれたスタッフたちに少しばかりの賠償金を分け与える必要が私にはあった。しかし、記録に残る示談書の内容にはそれなりにこだわったつもりだ。

完成した示談書を裁判長に提示された時、裁判長は言った。
「おたくのような小さな会社が大企業相手に遺憾の意を示させることができたんだから、よしとしなきゃ。普通はこんなことはない」

…それは、どう考えても違うだろ?
大企業を謝らせたのは相手が悪いことをしたからで、大企業なら謝らなくていいのか?

裁判長と初めて会った時、私は普通に名刺交換しようとした。すると裁判長は名刺を出さなかった。顧問弁護士に聞くと、そういうものらしいが、大きな組織の陰に個人を覆ったまま仕事を進めてるなんて…何か怖いな。責任の所在も不明確なままで…。
C社という大企業も根本的には同じような理由で被告席につくことになったわけだ。

だからこそ、自転車を盗まれた息子には、被害届を受け付けてくれなかった警察官の名前を聞いてくるように言った。個人が明確になると、いきなり責任感が出てくるものだろう?

C社の被告席には、かつて一緒に仕事をした人がいて、実にバツの悪そうな顔をしていた。
余談だがその人は会社のパソコンでアダルトサイトを見ていて、会社のパソコンをウイルスに感染させてしまい、業務をストップさせた前歴を持っている。その時以来のバツの悪さだったに違いない。

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