Episode No.3745(20100825)
実録トラブル体験談
巨大組織との仁義なき戦い-digitake.com 公に知られた大きな組織は極めて常識的で紳士的、付き合っていて安心感がある…なんて思い込んでいたら大間違い!

組織が大きくなればなるほど個人の責任感は希薄となり、そこには社会の常識を逸脱した独善的な常識が存在する。しかし、それを作り出しているのも、そこにいる個々の人間たちなのだ。


03 大企業の横暴

会社のトップが交代すると、新社長は口では「これまでの、やり方を継承して…」なんて言うものの、実際にはいち早く前社長カラーから自分のカラーに組織を塗り替えたいと考えるもの。ましてや前社長の政敵である親会社の社長に命ぜられて後釜に座った新社長であれば、その行動は顕著に現れてくる。

うちの会社で請け負っていたC社の部門では、その年、経営コンサルタントを招き、新体制構築に向けた模索を徹底的に行っていて、事実上の実行部隊であるうちの会社も定期的に会議に参画していた。

今風に言えば「事業仕分け」のようなもの。それが完成するかどうかという時に、いきなり社長が交代して、築いてきたものはいきなり白紙状態になってしまった。しかも、新社長が一緒に連れてきた、これまでの業務の経緯など何も知らない腰巾着の命で時代を逆行する「事業仕分け」が開始されることになる。

こうなるとサラリーマンは、からきし弱い。

それまで互いに理想を追って汗を流してきたというのに、手のひらを返したように給料をくれる者に尻尾を振りはじめる。そうすることでしか自分を生かす道はないと挑む以前に諦めてしまっているのか?
そういう人たちには、ひと言聞きたい。そんな長いものに巻かれて生きている自分の姿を胸を張って自分の子供に見せられるのだろうか?
ていてい「みんなを食べさせるために戦っていた」なんて体裁のいい言い訳をするのは見えているけど、ね。

この時、妥協に身を委ねなかった人は、この一件で苦しみ抜いた末、C社を去ることになった。が、今も別な会社で、その頃よりもっとスケールの大きな仕事をしているし、私とも親しくお付き合いさせていただいている。まさに戦友といった感じである。

仕事での人間づきあいは利害がからんだところからスタートする。これは仕方のないことだ。しかし「仕事は仲間を作る」というゲーテの格言通り、利害だけで長い付き合いが出来るほど、人間はデジタルにはできていない。

それは一度でも身を捨てて真剣に仕事に取り組んだことのある人なら誰でもわかることだと思うが…実際には信念より目先の利害をとる弱い人間が多いことも確か。なおかつ、それも仕方ないことだと真っ先に自分に対して言い訳をはじめる人間もサラリーマンには体質的に多いように思う。

さて、うちとC社とは業務委託契約を結んでいたわけだが、新社長がC社に引き連れてきた例の腰巾着から執拗な干渉を受けることになった。

雇い主が雇っている会社の仕事内容を干渉するのは当たり前の話だが、その内容が度を超えていた。
いわく、うちに関わるすべてのスタッフのプロフィールから給与明細まで見せろ、という。業務委託契約はしていても、うちはC社の子会社ではないから、むろんそのような義務はない。この時やりとりしたメールの文面は後に訴訟を起こしたときの証拠書類となった。

おそらくグルーブ内での仕事ばかりしてきたその腰巾着は、それが常識だと大きな勘違いをしていたに違いないだろう。概して大きな組織にいると世間知らずになるものだ。
あるいは、わかっていて単なる嫌がらせをしていたのか…。これまでも、そうしたやり口で自分に邪魔なものは強引に追い立ててきたのか…。どちらにしても大企業の横暴と言わざるを得ない。

そうした非常識な要求に対して、しばらくの間のらりくらりとかわしていると、やがて先方は行動に出てきた。うちの協力会社を軒並み無断で訪問しまわったのだ。

こちらの協力体制は万全だったし、こうした怪しい雲行きについても連絡してあったので、そうした一連の行動は逐一私の耳に入ってくる。

この行動がC社の墓穴を掘った。

とくに印刷関連の会社では「印刷データを出せ」と直接要求したらしいのだが、そこにC社の担当者が別の印刷会社の人間を同行していて、ご丁寧にもその印刷会社の人間も名刺を置いて行ったというのだ。

業務委託契約書には、うちの会社に無断でうちの協力会社に直接業務に関わる機密の開示を要求してはならないことになっているし、ましてや競合する第三者を伴って訪ねるなどということは言語道断である。
しかも、その業務委託契約書の内容は、もともとC社の顧問弁護士が作成したものなのだ。

これも後になってわかったことだが、新社長の腰巾着は、新社長に引っ張られてC社に来るまでグループ内の印刷会社の社長をしていたらしい。当然、腰巾着の命を受けてC社の担当者が連れ歩いた印刷会社の人間も腰巾着の元の部下。つまり、腰巾着にすればC社に来たからには何とかうちを切って、強引に身内に仕事をまわそうと算段していたというわけ。業務委託契約の内容はおろか存在も知らずにね。

証拠物件がそろったところで、私は早速、顧問弁護士を通してC社に正式な抗議を行うことにした。

対応してきたのは何故かうちとの業務委託契約書を作成したC社の顧問弁護士ではなく親会社の顧問弁護士だった。この時点ですでにC社の自主性は一切失われていたのだ。

先方の弁護士は、雇い主に言われたまま平謝りした挙げ句、業務委託契約の解消を申し出て来た。

それは予測されたことだったので、私はあらかじめ顧問弁護士と打ち合わせていた通り、残された契約期間内に当社が得るべき利益を算出し請求。また、うちで制作したカタログ類について、引き渡せるデータとデザイナーなどスタッフの権利を守るために引き渡せないデータを明確に分けたうえで先方に提示してもらった。

細かな事情を知らぬ先方の弁護士は、早期解決だけを念頭に、うちから提示した内容をそのまま通して一度は決着したのだが…。

それから数ヶ月もしないうちに、うちはC社を東京地方裁判所に提訴せざるを得ない状況になる。

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【この項目のバックナンバー】
 02 欲に打ち砕かれた理想
 01 正しいだけでは勝てない

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