Episode No.3734(20100813):
05 応援団 校内の人気者であるEにはOちゃんという彼女がいた。 Oちゃんも同級生で高校3年。 「白い蹉跌」の撮影中も、傍らにはいつもOちゃんがいた。 撮影もしていた私は、8ミリカメラを片手に、Eが部活で練習している姿を追いかけ、2人が仲むつまじく歩く姿も撮った。 「白い蹉跌」という自主製作映画の中で死ぬ役をやっていたEが、映画が完成した後、本当に亡くなってしまったという話は、この文章の冒頭からしている。 映画が完成した直後、夏の選抜高校野球大会がはじまった。 生徒会長だった私は、せめて横浜高校の応援団には負けないよう、校内で有志を募り応援団を結成した。例によって会長指名で団長はEに頼んだ。 E以下、我が舞高応援団は、にわかづくりとは思えない硬派な応援ぶりを見せた。 保土ヶ谷球場での試合に敗れた後、惜しかっただけに悔しくて泣きじゃくる野球部員を見た応援団長Eは大声を上げて それを聞きつけた野球部のOBがEに「おまえに何がわかる」と食ってかかった。顔を付き合わせてにらみ合うEとOB。周囲は殴り合いのケンカがばじまるかとハラハラしていたが、Eが「男は負けたくらいで泣いちゃいけないんです」とOBを見上げると、OBはEの顔を見るや静かにEの肩に手をかけて言った。 とにかくEというやつは、真っ直ぐなやつだった。 そして運命の7月22日。 その日、Eと私は夏休みだというのに朝から学校で補習を受けた。 補習が終わって2人で裏門を出てしばらく行くと、Eは友人から借りた90ccのバイクを隠していた。これからOちゃんを乗せて海に行くという。 私は応援団の様子も8ミリで撮影していて、その現像がちょうど上がってくる頃。Eは明後日うちに来て、一緒にそれを見る約束をした。 「じゃあ、また明後日な」 【この項目のバックナンバー】 Copyright 1998-2010 digitake.com. All Rights Reserved. |