黒鉄ヒロシ著「清水の次郎長」
上下巻を読破する。
漫画に読破とは
少々大げさな感じもするけど、
それくらいボリューム一杯、
文字も一杯の深い本。
その絵は、漫画というより、
一点もののイラストレーションといった感がある。
時にはアニメーションのように
動いて見える実に不思議で力強い画風だ。
次郎長さんの話は、
虎造節で繰り返しさんざん聞いているし、
黒鉄節で引用されている
史実に基づいた本も何冊か読んではいた。
かつては次郎長菩提寺の
梅陰寺まで行ったこともあって、
現存する次郎長の写真も見ていたから…
黒鉄ヒロシの描く次郎長を最初に見た時には
思わず「似てるっ!」と呟いてしまった。
…にもかかわらず、
話の中身は馴染んだ虎造節とは、
ちょっと違うので、多少の戸惑いもある。
石松の兄貴分が、
弟分として描かれていたりして、ね。
そこは歴史ロマン。
本当のことは誰もわからないだろう。
次郎長が全国的に知られるようになったのも
「東海遊侠伝」という
次郎長の養子が書いた本があったから。
結局…
日の当たる場所に出で、光を受けなければ、
誰も自分のカタチなど認識してはくれない。
引きこもっていてばかりじゃあ、
自分の姿は人目に映らないばかりか、
自分の姿さえ…つかめないだろう、な。