Episode No.1096(20020228):今日は、いくつ開いた?

頑張らなきゃいけないのは、わかってる・・・
でも、どうしていいのかわからない。

そんな人に、ぜひ観てほしい作品。
それが・・・
チャップリンの『ライムライト』。

私も、つい最近、DVD版を買って観なおした。

「華やかなライムライトの陰
 老いは消え、若さに変わる。バレリーナと道化の物語」

こんな字幕ではじまるこの作品が作られたのは1952年・・・
チャップリン63歳の時
ライムライトとは、舞台照明用の石灰光のことだ。

舞台はチャップリンの故郷ロンドン。
時代は少しさかのぼって1914年に設定されている。

白髪のチャップンが演じるのは・・・
かつては大人気を誇ったが、今は忘れられている喜劇役者。

飲んだくれていたある日、
足が麻痺して踊れなくなったことを苦に
自殺をはかったバレリーナを助けて・・・

物語とともに・・・
チャップリン作曲の「テリーのテーマ」も有名だし

「人生に必要なのは
 勇気と行動力と・・・お金が少し」

という名セリフは、今や格言になっている。

バレリーナを自殺から救った道化師が
自分が口にしたのと同じような励ましの言葉を彼女から受けて
再び舞台に立つ・・・
なんてドラマチックで人間味にあふれる展開だろう。

そして・・・
今回、久しぶりにこの作品を観なおして、あることに気づいた。

数え間違えていなければ
137分のこの物語に45回も登場する、ある動作。

それは・・・扉を開くという動作だ。

45回中、ちょうど半分くらいは
チャップリン演じるカルヴェロが扉を開いている。

あるシーンが始まる際の演出上のクセなのか・・・?

いや、生涯に80本以上の映画を撮っているチャップリンが
晩年になって撮った作品が単なるクセで演出されているとは思えない。

物語の展開をみてもわかるのは・・・
主人公をはじめとする登場人物たちが
つねに新しい扉を開いて、新しい現実の前に立った、ということ。

扉を開いたとたん、悲しみにくれることもあれば・・・
扉を開いたとたん、笑顔がこぼれることもある。

そして皮肉にも・・・
扉ごしに真実を知る場面もある。

そもそもファースト・シーンは
締め切って、扉の隙間からガスが漏れないようにした
自殺をはかる女性の部屋。

通りがかりの老道化師が
その扉をぶち破るところから物語が展開する。

わからない・・・
なんて頭を抱えて布団に潜り込んでいたら
一生かかっても何もわからない。

利き腕の握力をほんの少し使うだけ・・・
次の世界は、扉のすぐ向こうにあるんだ。


参考資料:「ライムライト」製作・監督・脚本・音楽・主演=チャールズ・チャップリン