Episode No.1075(20020204):役割は"志"に与えられる
久々に落ち着いて偉人の話・・・
その男、上山英一郎に大志なく、
「どうせ俺は田舎出身の農家の七男だから」
そんな風に考えていたとしたら・・・
"日本の夏"は変わっていたに違いない。
冬の最中に"夏"の話もないものだが・・・まぁ聞いてほしい。
明治18=1885年。
その男、上山英一郎は大学を卒業し・・・
郷里、和歌山に戻って、家業のミカン農園を手伝っていた。
時は明治・・・
しかも、田舎の七男が大学出だというのは
当時としては珍しい話だったに違いない。
和歌山と言えば温州ミカンの産地。
中でも上山家は、ミカン王と呼ばれるほど大きな農家だった。
そして七男・英一郎は、東京の大学・・・
慶應義塾でシッカリと"志"を学んできた。
「どうせミカンを売るなら、世界に売ってやろう」
そう考えた英一郎は・・・
恩師、福沢諭吉からアメリカの植物会社を紹介され
ミカン輸出の計画を進める。
交流のできたアメリカ人と苗木の交換をしていると
ある時、珍しいモノが送られてきた。
クロアチアを原産地とするシロムシヨケギク。
別名を除虫菊と言う。
害虫は農家にとって大敵。
そこで、英一郎はその苗木を普及させることを思いつく。
ところが・・・
新しい植物の作付けに興味を示す農家はなかった。
ある日・・・
全国を飛び回っていた英一郎は
旅先の宿で線香屋と相部屋となる。
そこから新しいアイデアが生まれた。
除虫菊の殺虫成分を生かした・・・線香を作ることだ。
それも、普通の線香のように真っ直ぐでは
せいぜい1時間程度しか持たないので・・・
妻のアイデアで渦巻き型にした。
渦巻き型の蚊取り線香が誕生したのは
今から、ちょうど100年前の明治35=1902年。
以来、日本の夏は・・・金鳥の夏になった、というワケ。