Episode No.1018(20011129):真実を語り合える関係

今日もまた・・・「刑事コロンボ」にまつわる話。

リチャード・レビンソンとウィリアム・リンクという
脚本家コンビによって誕生したコロンボというキャラクターを
世界中の茶の間で人気者に育て上げたのは・・・
やはり、主演の名優ピーター・フォークによるところが大きい。

日本においては、最初に吹き替えを演じた小池朝雄の功績も大きいと思うけど。

レビンソンとリンクは、コロンボの企画がたち上がる以前から
フォークとは知り合いだった。

完璧主義者フォークの演技については、2人とも評価はしていたが・・・
ただ、コロンボを演じるには若すぎる、ということで当初は候補にも上げなかった。

ちなみに当時・・・
レビンソンとリンクは33歳、フォークは40歳。

結局、周囲の予想をはるかに超えたコロンボ像をフォークは造り出し・・・
レビンソンとリンクも一躍売れっ子作家になったというところまでは前回も話した。

その後・・・
レビンソンとリンクはコロンボ・シリーズの製作総指揮にまわり
レビンソンとリンク、それにフォークを中心としたコロンボ・チームができた。

一時は半年間で7本もの作品を撮ったり・・・
90分ものから120分ものになったりと・・・寝る間もないほどの忙しさ。

もちろん、脚本も2人だけでは書けないから・・・
2人が作ったプロットをもとに若手が手分けをして書いている。

中には、フォーク自身が脚本を手がけた作品もあれば、監督をした作品もある。

監督も若手が続々と起用され・・・
中でも伝説となっているのは「構想の死角」を演出した若き日のスピルバーグ
まだ「激突」を撮る前の話だ。

今や押しも押されもせぬ大監督となったスピルバーグも、この頃は20代前半。
コロンボの撮影現場でも、ベテランのスタッフが自分の言うことを聞いてくれないと
製作総指揮のレビンソンとリンクに泣き言の電話をかけてきたことさえあったらしい。

ところが・・・
そういう時に若きスピルバーグをいじめた連中に限って・・・
その後「俺はスピルバーグと一緒に仕事をしたことがある」と威張って見せているとか。

こうした苦労話はつきることはないが・・・
苦労をともにすればするほどレビンソンとリンク、フォークの友情は深まった。

お互いに相当理解しあえていないと、とてもできないようなエピソードもある。

フォークの誕生日にレビンソンとリンクがプレゼントしたもの・・・
それは、半分しか入っていない目薬。

ご承知の通り、フォークは片目が義眼。
考えようによっては相当キツいジョークだが・・・フォークは大いに喜んだという。

「社交の秘訣は、真実を語らないということではない。
 真実を語ることによってさえも
 相手を怒らせないようにすることの技術である」・・・萩原朔太郎

友情の秘訣も・・・同じだろう、ね。


参考資料:「刑事コロンボ/レインコートの中のすべて」マーク・ダヴィッドジアク=著
      岩井田雅行/あずまゆか=訳 角川書店=刊 ほか