Episode No.610(20000810):役目はかわる 子供の役目は・・・勉強するコト。 大人の役目は・・・仕事をするコト。 そう言い聞かされて育ってきたけど・・・ 仕事はもちろん、大人だって勉強をしなくちゃならないコトを社会に出てから知った。 ただ、年齢や立場が変わっていくにしたがって・・・ 求められる役割は、どんどん変わっていくコトは事実・・・だよね。 数年前の資料になるけど・・・ 映画館の入場料1,800円のうち、映画館自体の取り分は40%の720円。 60%は映画会社に入る仕組みになってるらしい。 もちろん、興業内容によって多少異なるが・・・ 東宝、松竹、東映の3大メジャーに製作、配給、興業を牛耳られている日本映画界では 都市部に多い系列映画館を中心に、この仕組みは変わらないらしい。 ちなみに日本の映画入場料はアメリカの約2倍。 マーケットが狭い分、この値段でないとやっていけない。 娯楽が少なかった時代には、ウハウハ状態だった映画館も今やジリ貧であるコトは言うまでもない。 じゃあ、6割も持っていく映画会社は儲けているかと言えば・・・そう思う人も少ないだろう。 入場料を1,000円にまで落とした「映画の日」も入場数自体は横ばい・・・というのが現実だ。 ハリウッド作品が制作費を何十億、何百億とかれられるのは、やはりマーケットが広いから。 日本映画の場合、大作と言われるモノでも、せいぜい10〜20億。 5億くらいで作られているモノも多い。 メジャーに乗らず、映画館とダイレクトに契約を結んで映画上映をする独立プロダクション系の場合・・・ 制作費は、そんなにかけられない・・・でも1億くらいはすぐにかかる。 何せ映画は人手と時間がかかるメディアだ・・・総合芸術だから仕方ない。 約10分のフィルム代が、およそ1万5,000円・・・それを何百時間分も使うし、機材費だっている。 単館上映では観客数も少ないから、仮にヒットしても興行収入5,000万もいけば御の字。 宣伝費に500万くらいかけたとしたら、残り4,500万を映画館と折半して・・・ 回収できるのは約2,250万・・・つまり、7,750万以上の赤字を覚悟しないと映画は作れないコトになる。 入場料の60%をとっているというメジャー映画会社の台所事情も似たようなモノ。 では、どうやって食いつないでいるのかと言えば・・・お察しの通りビデオ化による収入。 ほとんどの映画会社の劇場配給収入が40%に満たないのに対し・・・ビデオの売り上げは50%を越えている。 残りの10数%は、テレビなどへの放送権などだ。 つまり、メジャー映画会社にとって、もはや映画館は・・・ 映画を「観せる」場所ではなく、ビデオ化のための「宣伝をする」場所にすっかり変わっている。 そういえば、レンタルビデオ屋なんかに行くと・・・ モノモノしく「劇場公開作品」と大きく書いたビデオをよく目にするよね。 劇場公開されたコトさえ知らない作品が多いけれど・・・。 映画好きの私にとっても、この状態は決していいコトだとは思わないけれど・・・現実は現実。 とりあえず宣伝媒体としてでも映画館がその存在理由を明確にして生き残ってくれている方がマシだ。 日本映画製作者連盟では・・・「映画の日」にでも客が集まらない理由をハッキリと言っている。 「映画は生活必需品ではないから、安いから観るというモノではない。 面白ければ高くても観てくれるんです」 何も莫大な制作費をかけなくても・・・きっと面白い映画はできると思うし、今もあると思う。 だって、昔はあったんだから・・・。 でも、その作品が面白いかどうかを知る機会がなかったら・・・ 宣伝には金がかかるからなぁ・・・回収の見込みのないところには誰も金を出さないし・・・ ま、とにかく・・・映画館のように・・・ 自分の役目が時代に合わせて変わっていくコトだけは認識しておいた方が良さそうだ。 ツブれないためには、ね。
参考資料:「定価の構造」内村 敬=著 ダイヤモンド社=刊
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