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「ハロー! いつから、はじめようか?」

30代後半の若さとはいえ、この世界では押しも押されぬスーパースターに、そう声をかけられた時には、さすがの彼も驚いたことだろう。

しかし彼は決してたじろぐことなく、この大先輩を相手にカラテの個人レッスンをはじめた。

契約期間は3ヶ月。授業料は1時間250ドル。当時のレートで換算すると日本円にして約7万5000円にもなる。

もちろん、大スターにとってそんな金額は問題ではない。問題はスターの名声を保つために鋼鉄のような肉体をさらに鍛え上げること。そのためには10歳も年下、しかもこの世界ではまだ駆け出しの男の前で汗だくになることもいとわない。

2人の交友が深まったことは言うまでもない。

レッスンが終わると車談議に花が咲いた。
彼はカーマニアとしても大先輩のスーパースターに感化され、ついに憧れのポルシェを購入した。

ハリウッドの街を新車のポルシェで走り出した彼の名は、ブルース・リー。

そしてポルシェに化けた授業料を支払った大スターこそ、名優スティーブ・マックイーンである。


参考文献:「ブルース・リーのすべて」日野康一=編・著 SCREEN編集部=構成 近代映画社=刊

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