Episode No.605(20000804):トロイより不思議な国 ハインリッヒ・シュリーマンといえば・・・トロイ発掘で知られる考古学者。 もともとは、貿易商だったのも有名な話。 稼ぎに稼ぎまくったあげく、41歳でスッパリと商売をやめ・・・ 昔からの夢だったトロイの発掘に全勢力を注ぎ、みごと成功・・・という理想の生涯を実現した。 もちろん運もよかったとは思うけど・・・やっぱり運だけじゃない。 まず商売を成功させるために・・・ フランス語、スペイン語、イタリア語、ラテン語、ポルトガル語、ロシア語を独学でマスター。 商売をやめ、トロイ発掘に向かう前の数年間には、その語学知識を活かして世界中を旅してまわっている。 そのうちの、ひとつの国で・・・シュリーマンは、ものすごいカルチャーショックを受けた。 子供だけでなく、大人の男女まで公衆浴場でいっしょに体を洗っている。 何と清らかな素朴さ! これは、まるでアダムとイヴ以前の原罪を知らない民たちの姿ではないか!! 一方では、その無邪気さとは裏腹に・・・ 身分の高い者が身分の低い者を、まるで虫けらのように殺している。 しかも、まわりで見ている者は、それを当然のように受け止めているようだ。 美しい景色と、清楚な町並み・・・そして、西洋人には何とも理解し難い倫理観。 この国こそ・・・1865年、慶応元年の日本の姿だった。 43歳の時、訪日したシュリーマンは・・・ 長崎のグラバー邸で知られる貿易商トーマス・グラバーの紹介状をもらいうけると約3ヶ月間、みの笠をかぶって、日本中の探訪した。 その後、フランスに渡って考古学を勉強し、博士号をとって・・・ トロイの遺跡を発見したのは、日本に来た6年後のことだった。 当時の日本の姿にショックを受けたのはシュリーマンだけではない。 ペリーをはじめ、訪れたすべての西洋人たちが、同じようなショックを感じたと言っていい。 キリスト教的なモラルで呪縛されている者が多かったせいもあるが・・・ 西洋人にとって当時の日本人は「無邪気で羨ましい」か「猥褻で野蛮」の、どちらかに思われたようだ。 それから130年ちょっと・・・130年って言うと、わずか何代か前でしかないんだけど・・・ すっかり西洋化した現代の日本。 クリスマスと正月を同時に祝うのを普通に感じている民族だから・・・ 特別な宗教観をもって暮らしている人は決して多くないと思うんだけど、カタチだけはすっかり西洋化。 近代化=西洋化だった時代も・・・もう終わったと思うんだけど、ね。 21世紀は何をめざす? 日本。
参考資料:「歴史毒本」山本 茂=著 光文社=刊
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