昨日に引き続き、
松井冬子展で感じた強烈な印象について話そう。
本来は目を背けたくなるような
腹を裂かれた死体…
だが、内蔵は誰もが持ってるもので、
それこそが真実…と作者は言う。
確かに自分の内蔵なんて
意識して生活している人は少なかろう。
できるだけ知らなくて済むものは、
知らない方が幸せだという考え方は、
かなり幸福な人たちだけの感性かもしれない。
しかし、人は皆…
多かれ少なかれ傷を負っているものだから、
怖いもの見たさという感覚は、
そうした自分が持っている言いたくない部分を
制圧してやろうという気持ちの現れなのかもしれない。
今回の松井冬子展には
印象に残る作品と数多く出逢えたが…
中でも強烈だったのは、
「無傷の肖像」と題された口唇口蓋裂
…いわゆるミツクチの女性を描いた作品と、
リアルな内蔵をむき出しにした天使の解剖図。
なんと言うか…
思い切り心のカサブタを剥がされた感じがした。
それはタブーを塞いでいるカサブタかもしれない。
寅さん的に言うなら…
それを言っちゃあ、おしまいよ。
…ってところだな。
けれど、傷口というものは
隠しているうちはコンプレックスだが、
見せつけるようになると勲章にもなり得るもの。
…と、まぁこんな風に、
普段はあまり考えないことを
感じさせ、整理してくれる芸術というやつは、
心の大掃除にはもってこいというわけだ。