Episode No.3246(20090121)
生涯素人

生前に出版された本は2冊だけ。
それも、まったく売れなかった。

見かねた挿絵画家のはからいで、
雑誌に1ページの無料広告を出したが
・・・それでも注文は、なし。

彼の本を出版するため
出資してくれた恩人は・・・
仕方なく、売れない本を
町内の子供のかけっこ大会の賞品にした。

さすがの彼も、
これでは協力してくれた人たちに
申し訳が立たず・・・
自分で自分の本を100冊買い取った。
・・・それも、父親から借金した金で。

今、もし・・・
この初版本を手に入れようと思ったら
・・・少なくとも数百万円。
生原稿なら、数千万円。
親友に宛てた手紙でも、
なんと1億8,000万円という鑑定も出てる。

むろん・・・
そんなことは作者である
彼の本意ではないだろうし、
作家になってひと山当てようなどという気は、
最初からさらさらなかったに違いない。

何故なら彼は
・・・宮澤賢治だから。

参考文献「宮澤賢治10の予言」 石 寒太=著 幻冬社=刊