Episode No.1401(20030219)
あなたに会えてよかった

私が好きな広沢虎造次郎長伝の中に
こんな人情話がある・・・

ある事件がきっかけで
逃亡生活を送っていた次郎長とその一行。
次郎長の妻、お蝶が
つらい旅暮らしの中で病気になった。

頼るあてもない土地ですれ違ったのは
かつて次郎長が世話をした若い渡世人

渡世人の暮らし向きも楽ではない。
一瞬、見て見ぬ振りをしようするが
咳き込むお蝶を見るに見かねて名乗り出た。

一行は渡世人の長屋へ身を寄せるが
そこには米粒ひとつない。

が、しかし・・・
すぐに渡世人は隣のバアさんから
米と卵を借りてきた。
バクチで勝つ度、渡世人は
そのバアさんに気前よく小遣いをやっていたのだ。

いくら善意と思っていても
受け取るばかりでは気が引ける。

たとえ同じ立場になくても
自分も相手に何か与えていると思えれば
少しは気が楽だ。

一方的におごっているだけでは
金の切れ目が縁の切れ目。

相手にも与える喜びを感じさせるというのは
人間関係を保つうえで・・・
やっぱり必要なことなんだね。

人生、居場所探しの旅だからねぇ・・・
自分を必要としてくれるところがあるのが
一番の喜び。

「今日、あなたに会えてよかった」
・・・そう言われることが嬉しいとわかったら
相手にもそう言ってあげればいいんだよ、ね。


参考資料:「二代 広沢虎造」日本の伝統芸能シリーズ・浪曲 テイチク