Episode No.1336(20021205)
共通の誤解

「私の考えでは、
 未熟な青年期の友情というものは、
 お互いに確乎たる考えに立った
 成人の友情に比べて、
 はるかにあやしげな、
 安定性のないものに思われる。
 それは恋愛と同じく、お互いの誤解や、
 お互いの人間及び人生に対する
 共通の誤解にもとづく部分が多く・・・」

三島由紀夫が29歳の時に書いた
『学生の分際で小説を書いたの記』の一説だ。

しかるに・・・
「はるかにあやしげな」
「安定性のない」ものだから
未熟な青年期の友情も、
そして恋愛も面白いのであって、
確乎たる安定した人間関係は・・・
時に窮屈で、新鮮味も驚きもない、
ましてや涙とは無縁の乾いた関係とも言える。

ところが・・・
「確乎たる考えに立った成人」になれないばかりに
あいかわらず「共通の誤解」のうえで
日常を過ごしている"見た目の大人"が
何と多いことか・・・!

彼らの言う"反論"は、ただの"言い訳"。

みんなが知ってるできない理由を
誰かが口にすることで・・・
まわりも安心してるだけなんだよな。

できない理由が先に出るうちは
何もできない。
・・・そんなことだって本当はわかっているのに
今度は、誰かができる方法を言ってくれるのを待っている。

もはやこれは・・・
青年期に誰もが経験した
「共通の誤解」を隠れ蓑にした
その場しのぎの保身術。

自分の発言に責任を持てない者は・・・
その仕事に携わる資格はないよ、ね。

黙っていれば給料がもらえる。
・・それが一番の誤解だと思うけどなぁ。


参考資料:「学生の分際で小説を書いたの記」三島由紀夫=著 筑摩書房=刊