Episode No.1328(20021126):才能は誰のため?

日本人で12人目のノーベル賞受賞者となった
田中耕一さんは・・・
周知の通り、島津製作所の人だ。

"癒し系"と言われる田中さんの人柄だけでなく
民間企業から初の受賞者が出たことが
田中さんが注目される要因ともなった。

先日聴いた講演で
田中さんはこんなことも話していた。

「大学にいる研究者なら
 研究発表をすることが仕事ですが、
 私たち民間の場合には、そうはいきません。
 開発した技術が商品化できない限り、
 その技術を公にすることはできないないのです」

幸いにも田中さんが開発した技術は商品化され
その後、学会で開発した内容を発表することができたので
今回の受賞につながったわけだが。

そう考えてみると・・・
利益の追求が何よりも優先される民間企業の基準は
ある意味でノーベル賞よりも厳しいのかもしれない。

田中さんは言う。

「我々技術者は、
 ともすると自分が納得できるかどうかで
 研究の成果をはかろうとしてしまいがちです。
 しかし、技術というのは
 やっぱり使われてナンボなんですね。
 使ってくれる人がいなければ
 何の役にも立たないんです」

技術者だけでなく
自称芸術家にもそれは言えるな、と思う。

日本の企業の中には
まだまだノーベル賞に匹敵する技術が
商品化を待って眠っていることだろう。

そして・・・
ひとり一人の中にも
必ず役に立つ才能はあるはずだ。

いつまで待ってても・・・
ノーベル賞はもらえない。

あるのなら・・・使ってナンボだよ。


参考資料:「全科展in東京2002 特別講演会」主催=日本科学機器団体連合会、日本工業新聞社