20090809
でじたけ流 教育論

第471回

モノを見る目〜秋本先生、無断掲載ごめんなさい。


「こち亀」が実写ドラマ化されて、
我が家で一番はしゃいでいるのは、この私。

もちろん子供たちも
生まれた時から
「こち亀」全巻が家にある環境に育っているので、
楽しみにはしているが…
連載開始時から読んでる
筋金入りの「こち亀」ファンから見れば、まだ青い。

思えば…
秋本治先生が、
まだ山止たつひこというペンネームで
「こち亀」の連載をはじめたのは、
私が今のうちの娘と同じ中学1年の頃。

当時はまだ少年チャンピオンで
山上たつひこさんの「がきデカ」が大人気。
同じ警官が主人公だから…というパロディ感覚で
ペンネームを山止たつひこにしたという話を
どこかで読んだことがある。

「こち亀」はTVアニメになる前に
一度、劇場映画化されている。

両さんを演じたのは、せんだみつお氏
原作通りの毛深さは似ていなくもなかったし…
草川祐馬さんの中川は
見た目もピッタリだったけど…
破天荒な警官というより、
ただのグータラ警官という感じで、
正直…つまらなかった。

その後、お馴染みラサール石井版
アニメ「こち亀」が登場。

厳密に言えば、その前に
少年ジャンプのイベント用に
「Dr.スランプ」のせんべい博士の声で知られる
内海賢二版の両さんもいたにはいたらしい。

しかし…
最初に両さんの声を
ラサールさんが演ると聞いた時には
…違和感があったなぁ。

だけど、実際に観てみると、
ラサールさんの声ではなく、
そこには別の両さんの声があった。

以来、原作もラサールさんの声で
読むようになってしまったし、ね。

その後はラサールさんの主演・演出による
舞台版も欠かさず観てきた。
それまでお芝居の楽しさなんてもものは知らなかったが、
私が少しばかり芝居に行くようになったのは
こち亀・舞台版」のおかげだ。

…と「こち亀」マニアぶりばかり書いてしまったが、
アニメや原作についての記憶力は、
今や子供たちの方が上。

子供たちはとにかく覚えるのが早い。
ただし、興味があることに限られるけど、ね。

親が教えられるのは…
埋没してしまった過去のマニアックな情報。

だけど、これも今やネットをたたけば、
いくらでも出てくる。

あとは…物の見方、だな。

ドラマ版「こち亀」
両さんを香取慎吾さんが演じるということはネットで知った。

正式な発表は少年ジャンプの誌上で、
表紙にバーンと香取扮する両さんと
原作の両さんが睨みをきかせている。

ネットに出た情報は、
どうやらジャンプを印刷している
印刷所から漏れたものらしい。

このジャンプの表紙を見て…
なるほどと思ったことがある。

普段の両さんには描かれていないものが、
この時の両さんにはしっかり描かれている。

それは何か?と娘にクイズを出した。

香取版両さんと原作の両さんが並んでいることで、
似てる感を出そうとしていることは
娘にも理解できたようだが…答えはなかなか見つからない。

答えが見つからない理由は、
写真が並んでいたからだと思う。

つまり、この両さんの絵は、
どっかからもってきたものではなくて、
写真と並べた時に違和感がないよう
計算してに描かれている…と思う。

香取版両さんを見た時に、普通注目が集まるのは
両さんのトレードマークである眉。

これほど特長のある眉なら
原作通りに付ければいいようにも思うが…
この点については
舞台で両さんを演じたラサールさんも
「原作通りの眉を人間に貼ると
 違和感があって気持ち悪くなっちゃう。
 やっぱり人間の眉の位置にないと
 かえってヘンに見える」
…と舞台版DVDの特典映像で言ってた。

香取版両さんは、その点うまく表情を作っていると思う。

私がこの表紙の写真を見た時に
真っ先に目に飛び込んできたのは…
香取慎吾の唇の赤さ、だった。

で、隣の両さんの絵を見てみると、
普段は描かれていない「唇」が描かれているのだ。

考えてみれば…
漫画で唇を描くのは、
よほど唇を強調したい時に限られていて、
たいていの登場人物に唇はない。
ただ、口が丸く開いているだけ。

もし唇のない人がいたら、
かなりの違和感を覚えると思うが、
漫画の登場人物に唇がなくても
違和感を覚える人はいないだろう。

それでも…
こうして写真と並べた時には
唇もないと、何かヘンに見えてしまう。

そこまで考慮して描いたというのは
…やっぱりプロの技だと思う。

最近、少しずつ写真が変化していって、
どこが変わったんでしょう?というクイズを
TVでやっているけど…
素人にも物は見えるが、
見ている部分は限られていて
決して全体は見えていない。

つまり素人の目は、
見えているつもりになっている目、なのだ。

うちの子供たちの中では
娘が一番絵を描くのが好きだ。

見るだけでなく、
自分が描く側になろうと思ったら、
普通は意識しないものまで
意識して見て表現できるようになる必要がある。

「こち亀」について
マニアックな話をしながら…
そんなことを教えたりもできる。


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