Episode No.280:休日特バン「こち亀」舞台版 観賞記 先だって、このページでもチラッとふれた「こちら葛飾区亀有公演前派出所」の舞台版を観てきた。 感想をひと口で言えば「スゴイ! 予想をはるかに上回る出来」だ。 別に私は演劇評論家というわけではないが、これまでに発刊されている「こち亀」の単行本114巻を1巻につき10回程度は読み直しているマニアの私が言うのだから間違いはない・・・と信じてほしい。 テレビアニメ化されて、一気にメジャーとなり、今や東京土産として「両さんどら焼き」が売られている「こち亀」だけあって、どちらかと言えばアニメの雰囲気。 それもそのはず、脚本、演出を担当したのはアニメ化されて初めて原作を読んだというラサール石井だから。 アニメ版で主人公、両津勘吉の声をやっているラサール石井は、舞台版でももちろん主演。 ひとり三役というわけだ。 正直言って、古くからの「こち亀」ファンである私は、数年前に「こち亀」がアニメ化されると聞いて、期待半分、不安半分だった。 あの破天荒な主人公にピッタリくる声がまったく思い当たらなかったのだ。 ラサール石井がやると聞いた時には、とにかく意外だった。 ところが初めてアニメ版を見た時、両津勘吉の声は、ぜんぜんラサール石井の声には聞こえなかったのだ。 原作者の秋本治をして「ラサール石井さんには、すっかり両さんがのりうつってしまったようだ」と言わしめるほど、今やハマリ役となった。 これで、ようやく実写映画版の悪夢からは、解き放たれたようだ。 そのラサール石井が挑んだ舞台版は、ミュージカル仕立て。 歌あり、踊りあり・・・、両さんは特製の金具付きサンダルでタップダンスまで披露して、原作ともアニメとも違う、舞台ならではの趣向が凝らされている。 ストーリーは、原作にもあるいくつかのエピソードを取り入れながら、新しい登場人物を入れたカタチで実にまとまりがいい。 両さんの持つ下町テイストや30年代の懐かしさに加えて、ハイテクものもしっかれ押さえられている。 脇を固める中川や麗子などは、アニメ声優ではないが、中川などは原作の雰囲気にウリ2つで、まったく違和感を感じさせなかった。 しかし、何と言っても会場をわかせたのは「海バン刑事」の登場。 身を飾ることが嫌いなために海パン一丁で事件を解決する特殊刑事課の男・・・これが、まさか生身の人間で登場してくるとは思いもよらなかった。 「こち亀」ファンで埋めつくされていた会場内では、開演前にプログラムを開いて、登場人物の中に「海パン刑事」があることを見つけて「海バン刑事が出てくるみたいだぞ!」と囁く声が、あちこちから聞こえていた。 上演時間は約2時間。途中に15分の休憩が入る。 2時間もてば、それこそ実写映画でも充分イケるじゃないか・・・と思わないではないが、この迫力は、やはり生身の人間が目の前でやっているからこそ伝わるというもの。 それだけではない。同じ「こち亀」ファンが同じ場所で笑い、同じ場所で拍手喝采しているから、何倍にも楽しい空間を作りだしているのだと思う。 公演は、7月28日までは銀座・博品館劇場で。その後は、かめありリリオホールや神戸の方でもあるようだ。 別に主催者から一銭ももらっているわけではないが、これは観てソンはない。 むしろ、ここまでやって、この程度の公演数ではたして元がとれるのかどうかが心配なくらい。 この公演をぜひ成功させて、年に一度は舞台版「こち亀」も観られたら嬉しいと思う。
参考資料:「舞台版・こちら葛飾区亀有公園前派出所」主催=フジテレビジョン、博品館劇場、えん ほか
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