両国の江戸東京博物館で開催中の
「
手塚治虫展」に高1の長男と小4の次男を連れて行く。
もちろん、一番行きたがっていたのは私だ。
中1の長女は、その日は学校の部活。
実は長男も部活(結局、バトミントン部)はあったらしいが、
「手塚治虫展」の方が楽しそうだということで、
いとも簡単に部活を休んだ。
長女は漫画を読むことも描くことも好きだが、
部活となれば断固として部活を選ぶ。
真面目と言うより頑固。
しかし、それで
みんなと一緒に出かけられないことに対しては
決してグチャグチャ言わないから、まぁ始末にはいい。
「手塚治虫展」はすごい人気だった。
何がすごいといって
観客が多いのもさることながら、
その客層が年齢・性別・国籍まで
バラバラなのがすごい。
私のような子連れもいれば、
車椅子に乗った老人もいるし、
一見チャラチャラしたカップルも多い。
メモを片手にした研究者風の人もいるし、
袖から刺青をのぞかせたヤクザ者までいる。
普通の個展やコンサートなら、
集まるファンの層はだいたい決まっているものだろうけど、
「手塚治虫展」については、
まるでターミナル駅の雑踏が
そのまま移動してきたような感じだ。
それだけ手塚作品が
幅広い層に受け入れられている証拠だろう。
また、みんな実に熱心に展示物を見ているんだ。
直筆原稿が飾られた硝子ケースに顔を近づけ、
ジックリ見ているものだから…ものすごい渋滞。
それでも誰も文句一つ言わず
子供からヤクザまで並んで見ている。
ちょうどこのところ…
次男が書庫から「鉄腕アトム」を引っ張り出してきて
熱心に読んでいた。
とくに奨めたわけでもないけれど、
うちの書庫ある新しい漫画といえば「こち亀」だけなので、
子供たちは必然的に漫画の古典ばかり読むことになる。
そして手塚漫画にはまる。
どこかで読んだ話だけど…
日本に来た外国人が
電車の中で漫画を読む大人が大勢いることに驚いて、
何故、日本人はそんなに漫画が好きなのか
不思議に思って尋ねたらしい。
すると尋ねられた人は、こう答えた。
…それは日本に手塚治虫がいたからだ。
確かに、そう思う。
おそらく諸外国では
漫画と言えば子供が見るもので、
いわばおやつみたいな扱いがほんどだろう。
しかし、日本においてはいわば主食的なもの。
だからヤクザから老人まで大人も読む。
漫画をそうした
文学的な地位まで押し上げた立役者が
漫画の神様、手塚治虫であることは誰もが認めるだろう。
漫画の神様が亡くなった1989年。
1月7日までの7日間が昭和64年で
翌1月8日から平成となった年…
日本橋の三越で同じように「手塚治虫展」が開催された。
仕事を抜け出して一人で観に行った。
出口付近に漫画の神様のトレードマークである
ベレー帽と眼鏡が飾られていた。
眼鏡がそこにある、ということは
この眼鏡の持ち主は、もうこの眼鏡を必要としていない
…と、いうことで
本当にいなくなってしまったんだなぁと思うと
ひどく悲しくなったのを覚えている。
今回の「手塚治虫展」にも
同じようにベレー帽と眼鏡が展示されていた。
うちの子供たちも食い入るようにそれを観ていた。
漫画の神様はいなくなってしまったけれど、
その作品は今も生き続け、
平成生まれの子供たちをも熱中させている。
そして行けなかった長女へのお土産は
長女にそっくりな…アッチョンブリケ! クッション。