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Fictional Talk No.003

架空対談・ドラマとは

「こんにちは! ぼくアトム。君がドナルド君かい?」

「ドナルドだって?! ちゃんとドナルドダックと言ってくれ! じゃないとマクドナルドと勘違いする人がいたらどーすんの」

「ごめんね」

「そう! 謝ればいーの。・・・オイオイ、そうしょげるなって! 鉄腕のクセに」

「うん! ありがとう!!」

「おおっ! また急に元気になりやがったな」

「ドナルド君・・・じゃなかったドナルドダック君、キミってちょっと口が悪いね」

「そりゃそうさ、俺みたいに口が悪くて意地悪なキャラがいるから、ミッキーの奴は人気者になれたんだ」

「えっ? どういうこと??」

「俺たちを作ったディズニーがさ、ミッキーを使ったアニメをドタバタ喜劇から、もう1ランク上のドラマにしようと思った時、いろんなキャラクターの組み合わせを考えたらしいんだけど、ひとつ足りないものがあったのさ」

「いったい何?」

「ミッキーにしてもミニーにしても、ディズニー作品のキャラクターは、みんな動物を可愛く擬人化したものだろ? でも、可愛くていい子ばっかりじゃドラマにゃなんない。そこで俺さまの登場さ。つまり俺だけが動物を人間にしたんじゃなくて、人間を動物にしたキャラクターというわけさ」

「つまり人間って口が悪くて意地悪だっていうわけ?」

「そんなこと、おまえさんだって、よく知ってんだろ?」

「うん・・・それは・・・。ぼくたちロボットを差別する人たちがいて、ぼくのお話は成り立ってる。そういえば、手塚先生が言ってた。ぼくのお話は、終戦直後、進駐軍に受けた差別に対する怒りをロボットと人間に置き換えたパロディだって」

「だろ? だからイイモンだけじゃドラマになんないだって」

「ちょっと待ちねえ、アヒルさんっとくらぁ。そんなに人間が悪い悪いって・・・。本当に悪い人間って、そうはいねぇモンよ」

「何だよ、おじさん。じゃあ、悪い人間が出てこないドラマなんてあるかい?」

「ありますとも! 俺の話にゃ、憎まれ口はたたいても本当に悪気のあるヤツなんざ、ひとりも出てこねぇ。な、アヒルさん、おまえさんだって人気者には違いあるめぇ」

「おじさん誰?」

「これは申し遅れました。手前、生国と発しまするは葛飾柴又です。帝釈天で産湯を使い、性は車、名は寅次郎。ひと呼んで、フーテンの寅と発します」


※アトムの声は、もちろん清水マリさんの声でお読みください。


参考文献:「ドナルド・ダックを読む」アリエル・ドルフマン/アルマン・マトゥラール=著 山崎カヲル=訳
     晶文社=刊 ほか

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