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Episode No.691(20001113):謙虚なワイン?

今世紀最後のボジョレ・ヌーボーが、先週の木曜日11月16日に航空便で入荷したらしい。
オフ会マスターでワイン通の某氏は、さぞかしこの日を待っていたことだろう。

美味いモノは、確かに美味いと感じられるものの・・・
オモチャに対するこだわりに比べ、食に対するこだわりが低い私が比較的高い店に入ってしまうのは
味にこだわってというコトではなく、単に空いているから・・・という理由によるところが大きい。

でも、高いところは高いなりの味をしているし・・・
そういう場所でマズイものを出されるコトほど頭に来るコトはない。
逆に、見るからに貧相な店で出されたモノが予想外に美味かったりすると、妙に得した気分になる。

入れモノと中味のバランスをとるコトは意外に難しい。

2000年のボジョレ・ヌーボーのラベルを描いたのはオランダの女流画家アンマリー・ドゥ・グルート。
彼女は「ミス・サイゴン」や「オペラ座の怪人」など・・・
ミュージカルのポスターも数多く手がけているアーチストで国際的な評価も高いんだとか。

こういった演出面で雰囲気を盛り上げるのもさることながら・・・
ワインにとって大切なのは・・・コルク栓らしい。

料理用のワインなどでは、スクリューキャップのモノもあるし・・・
実は日本で最初に発売された紙パックの酒はワインだったりもするんだけれど・・・
いまだにワインにコルク栓を使うのには、それなりの理由がある。

高密度で弾力性のあるコルク栓は、ビン詰めワインの気を逃さないために、うってつけなのだ。

最近はコルクボードもだいぶ安くなって・・・
コルク素材は安く簡単に手に入るように感じがするけれど、実はそうでもない。

ワインのコルク栓の場合、原料となるのは南米産の常緑樹コルクガシの樹皮。
コルクガシを植えて最初の外皮をはがすまで約30年・・・
そこに再びできた皮を剥がすまで約9年・・・
そこにできた3度目の皮を、さらに約9年後に剥がしたモノがようやく栓の原料になる。

ここまで時間をかけないと、本当に高密度で弾力性のあるコルク栓は作るコトができないらしい。
つまり、木を植えてからコルク栓ができるまでには約半世紀の年月を必要とする。

よほど年代もののワインでない限り・・・
中味よりコルク栓の方が、ずっと年代ものだというワケ。

いかに新しく人目をひくモノでも・・・
実は長年の伝統による支えがあったからこそ花開くというコトもある。

いきなりゼロから100に上がれるモノじゃない。
デパートや遊園地の入場何人目みたいに・・・たまたま、その時、その場所に自分がいた。
何かがうまくいった時には、それくらいの謙虚さも必要だろう。

最も、すでにボロボロで・・・
開ける度に破片が中に落ちるわ、すっかり気は抜けてしまうわ・・・
そんなコルク栓に締められていたんじゃ困るけどね。


参考資料:「時間の不思議」博学こだわり倶楽部=編 青春出版社=刊