Episode No.601(20000731):世界にふれさせて 今日も、またまた有名の作家の命日・・・。 『星の王子さま』で知られるアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ。 あの決して上手とは言えないけれど、ものすごく味のある『星の王子さま』のイラストは、サン=テグジュペリ自身が描いたモノ・・・という話は1年前にもした。 絵でも文章でも、あるいは音楽でも・・・ いわゆる「表現」において作者が見せたいモノ、同時に作者以外の人間が知りたいモノは・・・ 突き詰めてみると、作者の「世界観」なんじゃないかと思う。 まぁ「考え」と言ってもいいし「価値観」と言い換えるコトもできるかも知れないけれど。 その人の「世界」が見えると、どんなにヘタなモノでも何かを感じてしまう。 無論、ヘタ過ぎて伝わらないのは論外だけれど・・・。 その「世界観」が自分が持っていた漠然としたモノを明確にしてくれたとしたら・・・もはや快感だ。 実は先週の土曜日、久々にお芝居に行って来た。 ネットを通じてお知り合いになった吉川亜州香さんと内堀克利さんを中心とするユニット『10・Quatre (テンカトル)』の旗揚げ公演・・・『赤い炎の女〜白虎悲愁〜』。 得意のチャンバラを武器としたド迫力の舞台! もちろん演技はウマイし、お話自体も楽しめた。 でも、観客というモノは・・・ウマイ演技を見たいだけでは決して劇場に足を運ばないと思う。 その前に某有名アイドルの出るお芝居を観たけれど・・・アイドル目当てに若い女の子たちがタムロしちゃって、劇場スタッフもただあたふたするだけ・・・ってコトがあった。 そんなのは最初から予期できだだろうに。 本当にお芝居が好きで観に行った人の中には、かなり嫌がっていた人も少なくないようだったし・・・ ほかの役者さんたちも演りずらかったろう、ね。 ただウマイ芝居や面白い話を観たいだけなら、よほどの芝居好きでない限り、映画だっていいワケで・・・。 芝居小屋に足を運ぶからには生の迫力はもちろんだけど、それだけではない芝居小屋に行かないと感じられない「世界観」にふれたいと思う。 そういう意味でも『10・Quatre 』の雰囲気は、実によかった。 受付にいる女性スタッフはみんな浴衣姿。 浴衣姿はもちろんよかったんだけど・・・みんな愛想がよくて、一歩足を踏み入れた瞬間に温かみを感じたというのは決して大げさではない。 今回はギリギリまで行けるかどうかわからなかったんで、前売りの予約ができなかった。 一度、整理券をもらって、時間までオモテをブラブラして戻って来ると・・・ ちゃんと顔を覚えていてくれて、整理券を出す前に「あ! 大丈夫ですよー」と声をかけてくれた。 おまけに今回は2人の子連れだったんだけど・・・子供たちは規定にない特別料金で入れてくれたし。 買い物客がそこでほしい物を買うか買わないかは・・・品物だけを見て決めるワケではない。 まして、何度も同じ店で買おうと思うのは、その店が家から近いという理由だけではないはずだ。 とくに今は通販だって何でも買えるしね。 『赤い炎の女』は大好評で、初日には劇場に入れない人までいたとか。 あれだけの大立ち回りをするユニットだから・・・もっともっと広いところでできるといいね。 いや、このまま頑張っていけば、きっとそうなると思うな。 明治新政府の招待に応じて30年も日本に滞在したドイツ人医師、ベルツはこんな言葉を残している。 「日本では今の科学の成果のみを彼らから受け取ろうとしてのであります。 ・・・この成果をもたらした精神を学ぼうとしないのです」 『赤い炎の女』の公演は、今日7月31日が楽日。 うん、いいよ。すごくいい。
参考資料:10・Quatre旗揚げ公演「赤い炎の女〜白虎悲愁〜」2000年7月28日〜31日 新宿シアターモリエール 「医の名言」荒井保男=著 中央公論社=刊
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