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Episode No.398(991204):究極の弱者

先日、久々に本屋をのぞいた。

おもな目的は、今回の配本で全10巻が完結する
『大宰相』を購入することだったが、いろんなコーナーをブラついているとオッ! と思う本を見つけた。

まだ、最初の数ページしか読んでいないが、6ページ目にしていきなりウ〜ンナルボドと考えさせられる文面に出会った。

「人は自分の姿形さえ認識することはできない。が、手と足は別である。人はその一生を通じて手と足だけは見続けるのである。僕はこんな風に考えてみる。人がもし、より柔軟なからだを持った他の生物たちのように、限りなく自分自身に視線を巡らすことが出来たなら、遂に文明を獲得するにはいたらなかったかもしれない。直立することで急所をあらわにし、新しい視界に戸惑う究極の弱者は、他者の目を借りて自分を識ろうと最初に意識したとき、ヒトから人間になったのだ」

少々長い引用になったが・・・これは別に哲学書というワケではない。

本のタイトルは『僕の俳優修行』。
著者は、あの長塚京三である。

長塚京三と言えば・・・digitakeの熱心な読者の方なら、もうおわかりのコトと思うが・・・。
毎週、日曜日に連載している
『初めての不倫旅行』の主人公イメージとして、作者が勝手にキャスティングした俳優である。

『僕の俳優修行』の奥付を見ると、初版は1999年7月・・・比較的新しい本だ。

人間は両手を使って道具をあみ出したコトによって、他の動物よりも優位にたった・・・という考えは、あくまでも動物学的観点からの話。
哲学的にみれば「直立することで急所をあらわにし」た結果、「他者の目を借りて自分を識ろうと最初に意識し」て、道具がないと不安な生物になった・・・とも言える。

「他者の目を借りて」とは、まさに俳優ならではの観点かもしれない。

1945年生まれ・・・実は今年54歳の長塚京三が、仏ソルボンヌ大学卒というプロフィールの持ち主であることは、以前別の本で見たことがある。
実は、今回買った本のプロフィールには早稲田大学文学部演劇専修化中退とある。
その後、渡仏したことにはなっているが・・・。

なぜ、フランスに渡ることになったのか?
この半自伝的エッセイには、そのあたりのコトも書かれているだろう。
これから、ジックリと楽しみに読もうと思う。

明日の
『初めての不倫旅行』第10話も・・・お楽しみに!!


参考資料:「僕の俳優修行」長塚京三=著 筑摩書房=刊

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