THE THEATER OF DIGITAKE


初めての不倫旅行 宮田浩一郎■長塚京三
三村しより■石田ゆり子

宮田裕美子■
田中 祐子

番   頭■
佐藤 B作

以上、作者による勝手な配役


■マークIIはピカピカ

「今日は、いい天気だねぇ。本当にいい天気だ。天気が良くてよかったねぇ」

マークIIのハンドルを握る宮田浩一郎はフロントガラスに微笑みかけた。
本当は、助手席の方を見たかったが、何となく緊張してしまいそうで、ひたすら正面を向いていた。

助手席に座る三村しよりは、窓を全開した。
さわやかな秋の風に彼女の髪がゆれる。
ほのかに香る彼女の香水に気づいた宮田は一瞬、フロントガラスが真っ白になるような錯覚を覚えると、あわてて、かけていた銀ブチ眼鏡を右手でズリ上げた。

「わぁ〜、きれいな景色。課長! 見て、見てぇ」

無邪気にはじゃく三村の言葉に、頬の筋肉を意識的にゆるめながら宮田は答えた。

「み、三村クン。課長はないんじゃないかなぁ?! 課長はぁ。今日はあくまでもプライベートだし」

「じゃあ何て呼ぼうかなぁ・・・。宮田さん・・・? カタイかなぁ? いっそ、コーちゃん? キャハハハハ!!」

「はっ・はっ・はっ、結構ですよ。コーちゃんで」

宮田にとってコーちゃんと呼ばれるのは、実に四半世紀ぶりのことだった。

「じゃあ課長さん、じゃなかったコーちゃんも私のコト、三村クンなんて堅苦しく呼ばないでくださいね」

「いったい何て呼べばいいんだい?」

「もちろん、しよちゃんです! 」

「し、しよちゃん・・・ね」

宮田は思わずアクセルを踏み込んだ。
紅葉に化粧直しをはじめた山々が、高速道路の向こうから、ズンズンと近づいてきた。


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