ニュースに仕込みがあるくらいだから、流行に仕込みがあるのは当然の話。
よくブームの仕掛け人なる人物がマスコミに登場するが、歴史に残るブームは、仕掛け人たちの予想をはるかに上回って、社会現象になったりもする。
一軍人だったナポレオン・ポナパルトが、フランス皇帝へまで登りつめていく間には、不思議な力で国を救った悲劇のヒロイン、ジャンヌ・ダルクを持ち出してきて『昔、ジャンフ・ダルク、今、ナポレオン』みたいなキャンペーンをうって、国民をその気にさせた・・・という。
同じく軍人上がりのヒトラーの元には、プロパガンダの天才と言われたヨゼフ・ゲッベルスがいて、ノストラダムスの『諸世紀』から自分たちの都合のいい部分を自分たちの都合のいい解釈で抜き刷りして、国民に配ったという事実もある。
自分の意志で選んでいるつもりにさせて、実は仕組まれた方向にまんまと導かれているのが流行。
ひとつには、みんなと同じ流行にのっていれば安心・・・ということがあるかもしれない。
「もっと個性的になりたい」と思って最先端の流行ファッションを追う人も少なくないが、遠目から見ると何とも矛盾した話に思える。
ファッションの世界では、今年の流行色というのが話題になるが、この流行色自体が仕組まれたものであることをご存知だろうか?
流行色の仕掛け人は"インターカラー"という国際機関で、ファッションの中心地といわれるパリに、その本部はある。
"インターカラー"は、世界19ヶ国の色彩に関係した事業団体で構成され、毎年6月と12月に各国が案を持ち寄って2年後の流行色を決めている。
日本では、この結果を"日本流行色協会"を通じて発表し、アパレルメーカーなどは、この決定に従って、その時期に流行る色の服を準備する。
これによってアパレルメーカーでは、ある程度、売れ線の品物が作れて無駄がなくなる・・・という仕掛けだ。
ロンドンのテムズ川に、かつてブラックフライア橋という、その名の通り真っ黒な橋があった。
この橋は、自殺の名所として有名で関係者は何とか自殺者を減らすために知恵をしぼった。
その結果、黒い橋を緑に塗り替えることで、自殺者は3分の1に減ったという。
色が人間の心理におよぼす影響には馬鹿にならないものがある。
自分の気分は、自分で決めたい・・・もの。
ヤル気を起こすために自らを操作する・・・というならいざ知らず、他人に決められたくはない。