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Fictional Talk No.024(990214)
架空対談 
強さとは

H「俺はね、とにかく自分の好きなことだけやってきたんだ。嫌いなことは一切やらなかった」

J「私・・・本当は、こんな風になるはずじゃなかったんです。ただの農家の娘なのに」

H「好きなことだけやってたって言っても決して順風満帆な日だけじゃなかったよ。そりゃ競争の連続。でもね、苦労を笑うことができたのは、やっぱり好きなことをやってたからだろうなぁ、きっと」

J「私も決して後悔してるわけじゃありません。世の中が本当に平和だったら、田舎町の平凡な娘として平穏な一生を終えることはできたでしょうけど・・・、あんな世の中だったから・・・私が戦わなかったら、私の田舎だってどうなっていたかわからない」

H「戦って戦って・・・そして、勝つことが大事なんだな。新しいアイデアや理想を実現しようと思ったら、つねに首位優位に立ってないと、その余裕は生まれない」

J「そうですね、平和や幸せを望んでばかりいても強くなければ、それをつかみとることはできませんものね」

H「戦えば戦うほど強くなるんだ、人間というヤツは。俺は鍛冶屋のせがれに生まれて、物心つく頃から熱い鉄が打たれて、火花を散らすところを目の当たりにしてきたけど、まさに"鉄は熱いうちに打て"だと思うよ。自分から打たれる場に勇気をもって出ていかなきゃ、強くなれるはずはないな」

J「私も戦い続けるうちに、だんだん自分が強くなっていくのを感じました。最初は重いと感じていた鋼鉄の鎧も慣れてくれば体の一部。それに戦を繰り返す度に、いっしょに戦っている仲間たちとの絆も深くなっていきました」

H「そう! それが大事なんだ。共通の目的のために戦って、はじめて生まれてくるのが仲間意識。これは給料を増やしただけじゃ生まれてこない。金だけで動くヤツといっしょにやったって、うまくいきゃしないよ」

J「お金のためとか、体裁のためとかって、本当にイヤ!! そのお陰で私は・・・」

H「悔しかったろうな。かわいそうにな。・・・でもな、あんたのことは誰も忘れてないよ。所詮、人間の一生なんて、長い歴史からみれば一瞬だよ。長く生きてたって、すぐに忘れられちゃう人だって大勢いるんだ。幸い俺は、わりと長く生きることができたけど、ホンダにいたのは41歳からの24年間。人生全部からみれば4分の1強だ。あんたは13の時には、もう神の声を聞いたって言うんだから、やっぱり人生のうち4分の1以上をひとつの目的のために生きることができたじゃないか・・・」


本田宗一郎(本田技研工業 創業者)1906-1993 享年84歳
ジャンヌ・ダルク(神の啓示によりフランス軍の先頭に立った乙女)1412-1431 享年19歳


参考資料:「本田宗一郎/一日一話」PHP研究所=編 PHP文庫=刊
     「世界の伝記/ジャンヌ・ダルク」木村尚三郎=監修 集英社=刊

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