生き抜く力
Power to survive.
久しぶりにじっくり映画を観た。
だも映画館ではなく、図書館で。
たった一日。
その日しかやっていない上映会…。
今年で2回目を迎える上映会の開催日は8月6日。
毎年、この日に上映会を続けたいと主催者は言った。
2012年5月、満100歳の天寿を全うした
新藤兼人監督の『原爆の子』(1952年作品)を…。
8月6日は広島に原爆が投下され、
一瞬にして10万人の命の灯が
最先端技術の実験台として吹き消された運命の日。
新藤監督と、この映画祭の主催者は、
いずれも広島の出身だ。
あいにく 平日の日中行われた『原爆の子』の上映に
足を運ぶことは叶わなかったが…
最後に上映された新藤監督の遺作
『一枚のハガキ』(2011年作品)には間に合った。
物語のモチーフとなったのは
新藤監督自身の兵役体験らしい。
98歳の映画人が
脚本・監督を務めた執念の力作だ。
『原爆の子』と同様、
戦争を描いた映画だが、
戦場も戦闘シーンは一切出てこない。
残された者たちの葛藤が、
淡々とした日常と、
時に狂わんばかりの叫びで、
浮き彫りにされている。
それは、日常を戦場にさせられた者たちの叫びだ。
幾度も心をかきむしられるような気がした。
シーンによっては、
まるで舞台演劇を観ているような、
少し極端な描写を感じたけれど…
かつて日本中で見られたであろう
リアルな出征シーンを観てわかるように、
戦争それ自体、日常にはあり得ない
非常に演劇的で
極端な世界に人々を酔わせることによって、
機械的に命が消費されていった現実を
映像を駆使して伝えているように思われた。
そして…
生き抜くことを誓った人々は
…何も話さない。
新しい命を作るため…
ただ、懸命に働く。働き続ける。
本当の“力”は、
雄弁さでも、権力でも、もちろん暴力でもない。
…続けることだ。
8月6日の新藤兼人映画祭が、
これからも続いていくことを心から応援したい。
だから…人生、日々更新。
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