Episode No.3785(20101011)
一流に学ぶ

このところ天気が悪かったので
ミゼット通勤が続いた。

車の中で繰り返し聞いているのは
三島由紀夫の短編小説の朗読。

文学はついつい眠くなっちゃうから、
ほとんど読むことがない。
慣れないと表現の意図するところも
なかなか頭に入ってこないし…。

ひと度スッと入ってくるようになると
映像を見る以上の
広がりと深さがあるんだけど、ね。

そこで手軽でいいのが朗読。
何となく繰り返し聞いているうちに、
描かれている情景が広がってくるように感じる。

三島由紀夫の短編「大臣」を
俳優の清水紘治さんが朗読している
元は古いカセット文庫。

反対面では作者の三島由紀夫自身が
短編「サーカス」を自ら朗読している。

三島由紀夫の声を聞いてみたくて、
ずい分昔に買ったものだけど、
率直に言えば、
やっぱり俳優の清水紘治さんの朗読の方が
はるかにうまいし聞きやすい。
で、最近は「大臣」ばかり聞いている。

調べてみるとこの作品は
三島が24歳頃に書いた作品。

大蔵省勤めの頃、
見聞きしたことに着想を得たものだと思う。

今さら私が解説するまでもなく比喩表現が深い。
ただ、何々のように見えるというだけでなく、
そこに少しばかりの皮肉と
皮肉を裏付ける哲学、価値観がうかがえる。

そして何故、登場人物がそうなったのか、
個々の人生まで垣間見えてくる。

これは映像にはできない表現だと思う。

百聞は一見にしかず…とはいえ、
私たちが他人に何かを説明する時にも、
映像を使って説明することはまずない。

見たものから、
何をどこまで感じとることができるか?
感じとったものを、
いかに他人に伝えることができるか?

一流の文学に触れることで、
日常にも不可欠なこの一連の動作
あらためて考えてみようと思う芸術の秋。

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