例によってテレビには、
いったいどの番組だかわからないほど
同じ顔ぶれのお笑い芸人ばかり出ていて、
まったく興味をそそらない。
BSに切り替えてみると、
壮大な山景色が映し出された。
…中国か、と思ったが違った。
大分県国東半島。
この水墨画のような中に白装束の列が見える。
坊さんが修行のために10年に一度、
4日間かけ、国東半島ほぼ一周の150kmを巡る
「峯入」と呼ばれる荒行のドキュメンタリーだった。
12歳から71歳まで、二十数人が
念仏をとなえながら山道をゆく。
切り立った崖を一本の鎖を頼りによじ登ったり、
180mの断崖絶壁にかかった
手すり一つない橋を渡ったり…
信念と度胸、そして体力を試される行は
千年も前から続いているという。
進む間は念仏以外、私語は一切禁止。
ひたすら無心でゴールをめざす。
記憶は脳裏に刻まれるだけではない。
頭に刻んだはずの記憶など、
すぐに飛んでしまうことは
学生時代の勉強を思えば察しがつくよ、ね。
身につく…という言い方があるけれど、
身体で覚えたことでなければ、
いざという時の役には立たないだろうな。