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Episode No.209(990428):大切なものは"見えない"

今から62年前、昭和12年の今日、4月28日。
第一回文化勲章が、科学、芸術の分野に貢献した9名に授与された。

そのうちの一人に、横山大観がいる。

東京美術学校の校長だった岡倉天心を師と仰ぐ大観は、明治から昭和初期にかけて活躍した日本画家。
1958年に89歳で没するまで、酒を飲んでいる時でさえスケッチをしていたほど、絵一筋の人生を送った。

最近はTVの「開運なんでも鑑定団」などで時おり話題になるが、以前、地方のある美術館で大観の水墨画を何点か見たことがある。

印象に残ったのは、雄大な滝の絵と、雪をかぶった柿の木の絵。

滝の絵は、真っ黒な縦長の画面の中央にすーっと白い筋が通っていてるだけだが、大きな滝だとしっかりとわかる。
まるで滝の音が響いてくるようなみこどさだ。

雪をかぶった柿の木は、ふたふりほどの枝のアップで、しなった様子から雪の重みが伝わってくる。

水墨画では水彩画や油絵のように白い絵の具はない。
つまり、この滝も、積もった雪も実は本当は何も描かれていない。
しかし、そのまわりを描くことで、ただの紙の部分が不思議と浮き上がって見えるのだ。

考えてみると"幸福"にせよ"愛"にせよ、そして"命"にしても、人間が大切にしようとしているものには実際には"目に見えない"ものが多いように思う。

目に見えなくても確かにそこにある。
そう感じられるものことが尊いもの・・・なのだろう。

そりゃあ、お金も大切だけど、本当はお金が与えてくれる"安心感"が大切なんであって、目に見えるものは所詮・・・・と、いうことだ。


参考資料:「日録20世紀 1937」講談社=刊

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