Episode No.3526(20091215)
すれ違う思いやり

場末の飲み屋の場面は、
よく「男はつらいよ」にも登場する。

寅さんが旅先で
赤電話に10円玉を次々を入れながら、
実家の「とらや」に元気な声を聴かせる場面だ。

「みんな元気にやってるか?」なんてね。

そういえば、この「とらや」という店名は、
いつの頃からか「くるまや」に変わっていたな。

とにかく…
柴又では身内のみんなが、
寅の奴はどうしてるだろう?
…と心配しているところへ、
テキ屋仲間と一杯やって
上機嫌な寅から電話がかかってくる。

無宿者を心配するのも無理はないし、
逆に身内を案じて電話をする方にも悪気はない。

けれど…そこに思いの、すれ違いが生じたりする。

お互いに…
自分は大丈夫、でも相手が心配、なんだ。

一緒にいれば、そういう心配も少ないだろうが、
離れているとお互いのことはわからないから、
相手のことばかり気遣ってしまい、
逆に相手に気遣われていたりすると
素直に喜ぶどころか
「何を、呑気な声を出しやがって」
…なんてことになる。

もともと、気遣い合う仲だから、
それも終いには共に反省へとなっていくわけだけど…
その思いは伝わらず、
わがかまりを持ったまま、しばらく淋しく過ごす。

そしてまた…
ちょっと機嫌がいい時に、
この間のことなど忘れて電話して、
あるいはひっこり帰って顔を合わせ
…そして、また騒動が起きる。

寅さんは確かにフィクションだけど…
そういう人間関係は…実にリアルだよな。


| 人生日々更新 | 最近のBacknumber | 架空対談 | 教育論 |