Episode No.3525(20091214)
人生の吹きだまり

年末が近づいてきて
外で呑む機会が増えている。

…3件目のスナックでの話。

独りで入ってきた50歳の女性。
自分で「山口百恵と同じ年」と自慢げに言っていた。
年のわれには大胆な服装だ。

歌ってもいいですか、と
店のママに尋ねている。

そりゃあ客がカラオケを歌う分には
誰も文句は言わない。

歌は…下手じゃないけど、
正直とびきり上手なわけでもない。

ただ…熱唱はしてた。

熱唱を終え、
カラオケのモニターに向かって
深々と礼をした彼女は、
席に戻るなり
大きな声で独り言を言い出す。
あたかも隣にいた私に
話しかけてほしそうな感じで…。

ちょっとでも興味を見せると、さぁ始まった。

「親には歌手になることは反対されたんです」
…なんて身の上話が堰を切ったように出てくる。
…歌手…なの???

こっちはもう3件目でグタグタだし、
ここは早々に退散した方がよさそうだと
席を立つタイミングをはかる

また、彼女が歌い始める。
そそくさと会計を済ませて、
歌が終わると同時に
拍手しながら帰ってしまおうとすると…
まだ歌が終わってなかったりして。
…まったく、コントだな。

人生いろいろ。
場末の酒場は人生の吹きだまり。


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