いかに少ない労力で、
必要なことをやり遂げるか?
それは、合理性の追求のようでいて、
人によっては単なる手抜きである。
こと、経験の浅い若い人にとっては、ね。
近道を探すのは悪いことではないだろう。
しかし、
実際に渋滞にはまった経験もないのに、
いきなり裏道のガイドばかり見ていては、
本道を知ることはできない。
本道が何故混むのか、
実際にどんな車が走っているのかを
自分の目で見て知らなければ、
裏道を知る必要性もわからないし、
他人に道の説明も
できるようにはならないだろう。
第一…本に書かれた裏道など、
誰でも知っている道だから、もはや近道ではない。
無駄かどうかは、やってみた後で
判断すればいいことで…
そうした経験を通して近道は自分で探すものだ。
「今日の若い人は、
技能を磨くということを忘れて、
無理からに常識のみによる行動をとって、
出世しようと心がけている者が多いが、
実際、今日の世の中は、
そういう平凡人が多すぎて
困る状態になっている」
こう嘆いたのは阪急の創始者、小林一三翁。
昭和9年(1934)の記述だから
一三翁が阪急電鉄の社長を退き、
会長に就任した翌年、61歳の時の言葉だ。
その頃…75年前の若い人も、
もうとっくにいなくなっているだろうけど、
あいかわらず自信のない若者たちは
マニュアルやメニューにすがることで
失敗から、いや努力から逃れようとしても必死。
その必死さは、あくまでも自分を守るためであり、
任務を遂行することではなくなっている。
せっかく、失敗するチャンスがあるというのに…。
参考文献「私の行き方」小林一三=著 PHP文庫=刊