Episode No.2865(20071026):
「武士道」を生きた数学者
どんなにいいことも・・・
過ぎれば、よくないことになる。
過ぎた危機感、恐怖感が
犯罪をも肯定してしまいかねない。
宗教や哲学、
そしてさまざまな学問や文化は、
そのバランスをとるために伝えられている
・・・いわば、生きる知恵だ。
しかし、その
宗教、学問、文化でさえ、
過ぎればかえってバランスを損なってしまう。
これもまたNHKで見た特集だけど・・・
20世紀の初頭、
パリで発表された数学の命題に
「ポアンカレ予想」というものがあったらしい。
フランスの数学者
アンリ・ポアンカレ博士によって提出されたこの内容は
「単連結な3次元閉多様体は3次元球面S3に同相である」
・・・という一般人にはわけのわからない話だが、
解説によると・・・
もし、宇宙の果てまで紐をつけたロケットを飛ばし、
そのロケットが戻ってきて、紐をたぐり寄せた時、
円を描いた紐が
そのまま何にもひっかからずに回収できたら、
宇宙のカタチはおおむね丸い。
・・・ということらしいが、解説を聞いてもよくわからない。
ともあれ・・・
この予想を数学的に証明できるか否かが
世界の数学者に課せられた命題だった。
予想を立てたポアンカレ博士にも解けず、
そのまま約100年・・・。
この難問に取り憑かれて
精神を病んでしまった数学者が数多くいるという。
まるで・・・
人類未到の山に挑んだ人たちが、
次々と遭難してしまったようなものだ。
そして21世紀・・・。
2003年になって、ロシアの天才数学者
グリゴリー・ペレルマン博士によって、
この難問は解かれ・・・
以後、2006年までかかって、
その答えが数学者チームによって検証され、
完全に解けたことが世界中に伝わった。
ところが・・・
栄光をつかんだはずの
このペレルマン博士も精神を病み、
現在は人目を避けて、
ひっそりと暮らしいてるという。
元気な頃のペレルマン博士の写真は、
ちょっとトム・ハンクスっぽくて
明るい感じの人だったのに。
特集番組に登場して
明るくインタビューに答えたのは、
途中で「ポアンカレ予想」を投げ出して、
さっさと次の研究を進めたり、
家族と過ごす時間を選んだ人ばかり。
・・・何とも皮肉な結果だ。
ある意味、ペレルマン博士の生き方は
「武士道」だったかもしれないけれど・・・。
何でも、ほどほどにやっていたのでは
・・・答えは見つからない。
しかし・・・
そればかりやっていたのでは
・・・大切なものを見失ってしまう。
ちなみに・・・
現在でも「ポアンカレ予想」に匹敵する
数学者が説くべき命題は
・・・あと6つ、あるという。
参考「100年の難問は何故解けたか」NHKスペシャル