エバリスト・ガロアは、1800年代初めフランスが生んだ天才数学者だ。
数学のしくみにギリシア神殿のようなシンプルな美しさを感じたガロアは、幼い頃から取り憑かれたように数学を学んだ。
そして彼が到達したのが"群"という理論。
この群理論は、現代の数学、物理学にも大きな影響を与えるほどの大理論に発展した。
・・・が、このことを彼自身は知らない。
ガロアが書いた群理論の論文が、彼の友人の手によって発表され、さらに評価を受けるまでには10年の歳月を要した。
この時にガロアが生きていたとしたら、まだ30歳。
つまり彼は20歳でこの論文を書き上げ、そして死んだ。
天才的な頭脳とは裏腹に病弱であった・・・というわけではない。
むしろ、血気盛んな若者だったと言える。
数学しか知らなかった彼に、数学以上の魅力を感じさせた女性がいた。
しかし、この恋愛は成就しなかった。
彼女には、ガロアのほかにもうひとり男がいたのだ。
1832年の今日、5月31日。
ガロアは恋敵のその男と決闘に挑み・・・そして破れた。
群理論の論文は、この決闘前夜、万が一の時を考えた彼が、友人に手渡した手紙に記されていたものだった。
恋敵の銃弾に倒れた天才は、薄れていく意識の中でいったい何を思ったのだろう・・・?